改訂新版 世界大百科事典 「アゲハヒメバチ」の意味・わかりやすい解説
アゲハヒメバチ
Trogus mactator
膜翅目ヒメバチ科の昆虫。寄生バチの1種。大型で体長16mm内外,黒色および黒褐色の地に赤色と黄褐色の斑紋があり美しい。腹部の基部の数節には縦に走る隆起があり,それ以後の節には背面両側にそれぞれ大きなくぼみがある。野外で採集したアゲハ,キアゲハ,ミヤマカラスアゲハなどアゲハ類の幼虫を飼育していると,ときどきさなぎからチョウではなくこのハチが羽化して驚かされることがある。雌は寄主の若齢幼虫に産卵し,孵化(ふか)したハチの幼虫はそのまま体内で成長し,アゲハの幼虫がさなぎになってしばらくすると,その背面に穴を開けて羽化する。北海道から九州まで日本全国に広く分布し,シベリア,サハリン,中国などからも知られている。北海道には,ヨーロッパから日本まで広く分布する近縁のT.lapidatorが知られているが,この種もアゲハ類に寄生する。
執筆者:桃井 節也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報