改訂新版 世界大百科事典 「キアゲハ」の意味・わかりやすい解説
キアゲハ
Papilio machaon
鱗翅目アゲハチョウ科の昆虫。イギリスからユーラシア大陸を経て,アラスカまで広く分布し,日本では全国の海岸から山地までもっともふつうに見られる。開張9~12cm。黄色の地に濃淡の黒い斑紋がある。アゲハチョウに似ているが黄色みが強いのでこの名がついた。幼虫の食草がニンジン,セリ,ミツバ,パセリなどのセリ科植物であるため,市街地や樹林中には少なく,明るい開けた環境に多い。活発に飛び,各種の花に飛来し,山地のものでは雄が山頂に好んで集まる習性がある。春型は夏型より小さく,前・後翅の外縁にある黒い帯が狭い。日本産の夏・秋型の雌の斑紋は雄と明瞭に異なる。若齢幼虫は黒褐色に白帯があり,終齢幼虫は緑色に黒の横縞模様がある。さなぎで越冬する。年2~3回発生する。普通種ではあるが,ニンジン,ミツバなどの栽培植物がない所では連続発生はまず認められない。野生のセリ科植物ではつぼみや花によく産卵し,幼虫は実を好んで食べる。夏に成虫の見られないニンジン畑にも秋には多くの幼虫が発見される場合も多く,季節により発生地が,平地と亜高山帯の間を移動していると思われる。イギリスにはアゲハチョウ科では本種だけが分布し,その名swallowtailは,大型有尾のアゲハ類の代表名となっている。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報