日本大百科全書(ニッポニカ) 「アサバホラアナゴ」の意味・わかりやすい解説
アサバホラアナゴ
あさばほらあなご / 浅場洞穴子
shortbelly eel
[学] Dysomma anguillare
硬骨魚綱ウナギ目ホラアナゴ科アサバホラアナゴ亜科に属する海水魚。相模(さがみ)湾以南、西太平洋からインド洋、北西大西洋に広く分布する。体は細長く、前半部は円筒形で、尾部後方は側扁(そくへん)する。吻(ふん)部、下顎(かがく)前半部、口縁に微小な乳頭状の小突起が多数ある。吻は短く、丸く、口よりも前に突出する。前鼻孔(ぜんびこう)は管状で吻端付近の側面にあり、後鼻孔は管状ではなく、目の前縁下方にある。目は口裂の中央部上方にあり、小さく、退化的で、皮下に埋没する。口は大きく、吻の腹面に開く。口の後端は目の後縁下をはるかに越える。主上顎骨に3~4列の小円錐歯(えんすいし)があり、前上顎骨に1対(つい)の犬歯状の歯がある。下顎に7~8本の小円錐歯が1列に並ぶ。鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は1列で、4~5本の大きな複合歯(2本の歯が癒合したもの)からなる。鰓孔(さいこう)は胸びれ基部下に開き、左右のものは広く離れている。肛門(こうもん)は前位で、胸びれ基底の直下またはそれよりわずか後方に位置する。背びれは胸びれ基部上方よりわずかに前方から、臀(しり)びれは胸びれの後端下方のわずかに後方から始まる。体は背方が茶褐色で、腹方は淡く、尾部後方の腹側は濃い灰褐色。背びれと臀びれの縁辺は白い。全長55センチメートルあまりになる。水深30~270メートルにすみ、底引網でとれるが、食用にはしない。
2006年(平成18)までアサバホラアナゴはウナギ目ホラアナゴ科メクラアナゴ亜科に分類され、和名はメクラアナゴであったが、これは差別的語を含むため、日本魚類学会が2007年1月に現在の標準和名に改名した。本亜科のヒレジロアナゴ属Meadiaのヒレジロアナゴは目が大きいこと、鋤骨歯は小さく2列であることなどで本種と区別できる。
[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]