日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アジアフォーカス・福岡国際映画祭
あじあふぉーかすふくおかこくさいえいがさい
福岡市が主導し、アジア諸国との交流を図る「アジアマンス」(毎年9月を中心に開催)の主要イベントとして、1991年(平成3)に創始された映画祭。同年の第1回から2006年(平成18)の第16回までは、佐藤忠男(ただお)(1930―2022、映画評論家)がディレクターを務め、「アジアフォーカス・福岡映画祭」の名称であったが、2007年の第17回に梁木靖弘(はりきやすひろ)(1952― 、演劇評論家)が第2代ディレクターに就任するとともに、「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」と改称。2020年(令和2)の第30回を最後に終了した(実行委員会の解散は2021年3月)。
コンペティションは行っていなかったが、2006年から一般観客の投票による「福岡観客賞」を設けていた。福岡市民のみならず市外・県外から訪れる観客も多く、地方都市に根づいた国際映画祭としては、東の山形(山形国際ドキュメンタリー映画祭)、西の福岡、と並び称されることがあった。20年余にわたってアジア映画の日本への普及に努めてきた功績は大きい。
映画祭の特徴としては、日本未公開作を中心に優れたアジア映画を紹介するとともに、旧作も含めた個性的な特集を行って高い評価を得ていた。1992年の「ベトナム映画特集」、1993年の「モンゴル映画特集」などは世界的にも珍しい特集で、福岡での上映後にヨーロッパやアジアの国際映画祭を巡回するなど、内外の高い評価を得た。その後もスリランカ、フィリピン、イラン、台湾などの地域別に特集を実施し、2012年の「アカデミー賞受賞監督アスガー・ファルハディ全作上映」は好評を博した。
また、1996年設立の福岡市総合図書館と連携し、上映作品の多くを同図書館の「福岡市フィルムアーカイヴ」に収蔵していることでも知られる。同アーカイヴは、製作国にも残っていない貴重なフィルムを含めたアジア映画コレクションを有している。
[石坂健治]