アセトン血性嘔吐症(読み)あせとんけつせいおうとしょうしゅうきせいおうとしょうじかちゅうどくしょう

家庭医学館 「アセトン血性嘔吐症」の解説

あせとんけつせいおうとしょうしゅうきせいおうとしょうじかちゅうどくしょう【アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症/自家中毒症) Acetonemic Vomiting】

[どんな病気か]
 腐ったリンゴのようなにおいの吐物(とぶつ)を吐(は)く発作(ほっさ)をくり返す病気です。
 リンゴの腐ったようなにおいは、血液中に増えたアセトン体という物質のにおい(アセトン臭(しゅう))なのでアセトン血性嘔吐症といいますが、この嘔吐の再発をくり返すので、周期性嘔吐症(しゅうきせいおうとしょう)ともいいます。かつては、自家中毒(じかちゅうどく)ともいいましたが、この病名は、現在ではあまり使用されません。
[症状]
 ぐったりしたり、眠たそうにしたりしているうちに嘔吐が始まることもあれば、突然、嘔吐が始まることもあります。吐物がリンゴの腐ったようなにおいがするので、この病気による嘔吐と誰にでもわかります。
 嘔吐をくり返すうちにコーヒーのかすのような物が、吐物にまじるようになります。嘔吐は、1日、数回から十数回のことが多いのですが、吐き気だけで嘔吐をしないこともあります。
 重いときには、嗜眠(しみん)(意識が薄れ、うとうとした状態)やけいれんがおこることもあります。
 おこりやすいのは2歳以上の子どもで、数週から数年と、おこる頻度はさまざまです。10歳を過ぎるとおこらなくなります。
[原因]
 からだが脂肪しぼう)をエネルギー源として使用すると、アセトン体という物質が生じてきます。血液中のこのアセトン体の量が増え過ぎるのが原因です。
 しかし、なぜ、血液中のアセトン体の量が増えるのか、よくわかっていません。血液中のぶどう糖をエネルギー源としてうまく利用できなくなり、代わりに脂肪をエネルギー源として利用するためにアセトン体が増えるのではないかと考えられています。
 この嘔吐をおこしやすいのは、神経質な子どもで、疲労、精神的なストレス、環境の変化をきっかけとしておこることが多いようです。また、かぜなどの感染症がきっかけになることもあります。
[治療]
 点滴(てんてき)で水分、ぶどう糖、電解質(でんかいしつ)などを補うことで嘔吐は止まり、元気になります。
 リンゴの腐ったようなにおいのする吐物を吐いたときは、家庭でようすをみていないで、早く小児科医の治療を受けたほうがいいのです。

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百科事典マイペディア 「アセトン血性嘔吐症」の意味・わかりやすい解説

アセトン血性嘔吐症【アセトンけっせいおうとしょう】

周期性嘔吐症

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のアセトン血性嘔吐症の言及

【自家中毒】より

…〈2~10歳くらいの小児にみられ,多くは起床時,ときに日中,急に元気がなくなり,ぐったりとし,嘔吐をはじめ,血液中ケトン体の上昇,アセトン尿をともなう疾患〉と説明され,同一小児にくり返して起こりやすい。この状態は,医学的にはアセトン血性嘔吐症acetonemic vomitingあるいは周期性嘔吐症cyclic vomitingと呼ばれているもので,〈自家中毒〉という言葉がまったく無関係な食中毒を連想させる響きをもつことから,現在では,この状態を表現するには,自家中毒という病名よりも上記の診断名を用いるのが適切であると考えられている。このような症状は脳炎,髄膜炎,尿毒症,肝炎,急性虫垂炎,腹膜炎,腸重積症,脳腫瘍,糖尿病性昏睡でもみられるので,これらを確実に鑑別することがたいせつで,原因の明らかでない場合のみ,本症(アセトン血性嘔吐症)と診断をつける。…

※「アセトン血性嘔吐症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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