自家中毒(読み)じかちゅうどく

精選版 日本国語大辞典 「自家中毒」の意味・読み・例文・類語

じか‐ちゅうどく【自家中毒】

〘名〙
① 体内に発生した有毒代謝産物による中毒。尿毒症糖尿病性昏睡など局所的病変とともに嘔吐(おうと)、頭痛、食欲不振、発疹などの一般中毒症状を呈する。狭義では、小児に特有の周期性嘔吐症アセトン血性嘔吐症)をさす。自家中毒症。〔現代術語辞典(1931)〕
② 比喩的に、ある人や組織の、内部に生じた原因によって引き起こされる好ましくない状態。
※他人の顔(1964)〈安部公房〉灰色のノートを逆さに使って〈略〉自分だけのための記録「一刻休息もなく、癌のように増殖しつづける、嫉妬の自家中毒」

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デジタル大辞泉 「自家中毒」の意味・読み・例文・類語

じか‐ちゅうどく【自家中毒】

体内で代謝に異常が生じ、生成された毒物により障害が起こること。尿毒症など。
小児にみられる、リンゴのようなにおいの吐物が特徴の病気。体内で脂肪が代謝されるときに生じるアセトン体が血液中に増えたため起こる。周期性嘔吐おうと症。アセトン血嘔吐症。

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改訂新版 世界大百科事典 「自家中毒」の意味・わかりやすい解説

自家中毒 (じかちゅうどく)

〈2~10歳くらいの小児にみられ,多くは起床時,ときに日中,急に元気がなくなり,ぐったりとし,嘔吐をはじめ,血液中ケトン体の上昇,アセトン尿をともなう疾患〉と説明され,同一小児にくり返して起こりやすい。この状態は,医学的にはアセトン血性嘔吐症acetonemic vomitingあるいは周期性嘔吐症cyclic vomitingと呼ばれているもので,〈自家中毒〉という言葉がまったく無関係な食中毒を連想させる響きをもつことから,現在では,この状態を表現するには,自家中毒という病名よりも上記の診断名を用いるのが適切であると考えられている。このような症状は脳炎,髄膜炎,尿毒症,肝炎,急性虫垂炎腹膜炎,腸重積症,脳腫瘍,糖尿病性昏睡でもみられるので,これらを確実に鑑別することがたいせつで,原因の明らかでない場合のみ,本症(アセトン血性嘔吐症)と診断をつける。したがって,2回目の発作以後の診断は容易であるが,1回目の発作では診断が困難な場合もある。

 本態の詳細は不明であるが,おそらく軽度の気道感染,食餌過誤および精神的ストレスなどが誘因となって延髄の嘔吐中枢が興奮し激しい嘔吐を起こさせ,同時に間脳の自律神経中枢も興奮し,脂肪組織から血中へ遊離脂肪酸が動員され,その結果,肝臓におけるアセトン体の生成が増加し,アセトン血症を起こすものと考えられる。

 臨床症状をまとめてみると,2歳から10歳くらいの子どもで,いつも元気に起きる子どもが,よく目覚めず,ごろごろとして元気がない。また一度起きても食欲がなく,ときに腹痛を訴えたりする。そのうちに嘔吐が始まり,はじめは前に食べたものを吐くが,しだいに胃液,胆汁様のものを吐き,ときに血液が胃酸で茶褐色になったいわゆるコーヒー残渣様のものを吐くようになる。しだいにうとうととなり,意識がはっきりしなくなる。嘔吐の回数が多いと,脱水症状すなわち皮膚や粘膜の乾燥がみられ,脈拍も速く小さくなり,顔面蒼白となる。幼児期から学童初期の小児に起こることが多く,この嘔吐発作は,同一小児に反復する傾向にあるが,10歳前後までには,ほとんどの小児で自然に消失する。予後は一般に良好で合併症や後遺症もない。検査所見としては,血中・尿中のアセトン体の増量,血液pHの低下,代謝性アシドーシスがある。

 治療としては,病初期あるいは軽症の場合は,安静を保たせ,鎮吐薬またはブドウ糖液の注射を行う。中等症~重症の場合は飲食物を禁じ輸液療法を行う。予防(発作のないときの治療)としては,精神的・肉体的過労を避け,かつ過保護に注意する。
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百科事典マイペディア 「自家中毒」の意味・わかりやすい解説

自家中毒【じかちゅうどく】

一般に体内に産出された代謝産物中の毒性物質による中毒症状をいう。毒性物質が異常に多量産出されたり,通常は分解・排出されて無害になるのに,その分解・排出が妨げられたりして起こる。たとえば腸内でタンパク質分解による毒性物質が異常に多量産出されると,胃腸障害だけでなく,頭痛,めまい,昏睡(こんすい),心機能障害等の症状を呈する。尿毒症妊娠中毒症も自家中毒に数えられる。なお幼小児の自家中毒症は周期性嘔吐(おうと)症と同一疾患。
→関連項目子癇中毒

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自家中毒」の意味・わかりやすい解説

自家中毒
じかちゅうどく
autointoxication

体内の新陳代謝の過程に生じる産物の毒性による中毒現象で,たとえば尿毒症,糖尿病性昏睡などは自家中毒による。しかし,一般に自家中毒といえば,自家中毒症をさす。これは周期性嘔吐症とかアセトン血性嘔吐症ともいい,血中アセトン体増加を伴う嘔吐症で,2~6歳の小児に多くみられる。前駆症状として全身倦怠,食欲不振,頭痛,腹痛などがあり,嘔吐が始る。突然,嘔吐で始ることもある。嘔吐は何回も繰返し,胆汁までも吐くようになり,無気力,倦怠,脱力状態となり,ひどい場合には,嗜眠 (しみん) 状態となる。やせた神経質な小児に起りやすいことから,ストレスの影響も考えられている。

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栄養・生化学辞典 「自家中毒」の解説

自家中毒

 自己中毒ともいう.通常体内で生じる毒性物質による中毒.狭義には小児の周期性嘔吐症.

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