日本大百科全書(ニッポニカ) 「アタマン」の意味・わかりやすい解説
アタマン
あたまん
Атаман/Ataman ロシア語
長老、隊長、代表を意味することばで、語源はトルコ語。封建時代、ロシア、ウクライナの若干の地域の農村共同体の選出首長をさした。ロシア、ウクライナのコサックの場合は選出官職名。期限付きで選出されるボイスコビエ(軍事)・アタマン、委託仕事のためのナカズヌイ(任命)・アタマン、パホドヌイ(行軍)・アタマンなどに分けられる。ドン、ヤイツなどのコサックでは、ボイスコビエ・アタマンが隊長であった。そのほか、スタニチヌイ(コサック村)・アタマン、黒海コサックの場合はクレヌイ(班)・アタマンがあった。ザポロジエとザドゥナウ・コサックでは隊長はコシェビエ(軍営)・アタマンとよばれた。
18世紀初め帝制政府はボイスコビエ・アタマンの選出制を廃し、指名、承認制とし、19世紀にはすべてのボイスコビエ・アタマンはナカズヌイ・アタマンとなった。ロシアとウクライナでは営業アルテリ(組合)や、漁夫組合の長老もアタマンとよばれた。また、1917年の十月革命後、白軍将軍は自らをアタマンと名のった。
[木村英亮]