アタマン(その他表記)ataman

翻訳|ataman

改訂新版 世界大百科事典 「アタマン」の意味・わかりやすい解説

アタマン
ataman

ロシアコサック隊長語源はおそらくトルコ系。はじめは各コサック集団の集会クルーク)で普通任期1年で選ばれ,コサックの自治と民主制を象徴する存在であったが,のちには政府が任命した。ウクライナのコサックの首長でウクライナの自治を代表したヘトマンhetman(ロシア語でゲトマン)も18世紀に廃された。1827年ロシア皇太子が全コサック軍団を統率するアタマンになった。クルークで使節などに選任されたもの,各部隊や村で隊長,村長に選ばれたものもアタマンと呼ばれた。アタマンになったのは富裕な上層部分(スタルシナ)で,彼らは19世紀までにロシア帝国の貴族になった。またラージンなどの農民反乱の指導者や盗賊首領もアタマンと称し,ロシア革命の際コサック出身の将軍カレージンAleksei Maksimovich Kaledin(1861-1918),ついでクラスノフPyotr Nikolaevich Krasnov(1869-1947)がドン・コサックのアタマンに選ばれ,革命軍と戦った。16~17世紀に農村共同体の,のちにはアルテリのスターロスタ(長)も時にアタマンと呼ばれた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アタマン」の意味・わかりやすい解説

アタマン
あたまん
Атаман/Ataman ロシア語

長老、隊長、代表を意味することばで、語源はトルコ語。封建時代、ロシア、ウクライナの若干の地域の農村共同体の選出首長をさした。ロシア、ウクライナのコサックの場合は選出官職名。期限付きで選出されるボイスコビエ(軍事)・アタマン、委託仕事のためのナカズヌイ(任命)・アタマン、パホドヌイ(行軍)・アタマンなどに分けられる。ドン、ヤイツなどのコサックでは、ボイスコビエ・アタマンが隊長であった。そのほか、スタニチヌイ(コサック村)・アタマン、黒海コサックの場合はクレヌイ(班)・アタマンがあった。ザポロジエとザドゥナウ・コサックでは隊長はコシェビエ(軍営)・アタマンとよばれた。

 18世紀初め帝制政府はボイスコビエ・アタマンの選出制を廃し、指名、承認制とし、19世紀にはすべてのボイスコビエ・アタマンはナカズヌイ・アタマンとなった。ロシアとウクライナでは営業アルテリ(組合)や、漁夫組合の長老もアタマンとよばれた。また、1917年の十月革命後、白軍将軍は自らをアタマンと名のった。

[木村英亮]

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百科事典マイペディア 「アタマン」の意味・わかりやすい解説

アタマン

ロシアのコサック頭目初期には各コサック集団の集会(クルーク)で通常任期1年で選ばれたが,18世紀初めからツァーリ政府が任命ないし承認するようになった。ヘトマンhetmanと呼ばれるウクライナのコサックの首長は,ウクライナ自治の象徴であったが18世紀には廃された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アタマン」の意味・わかりやすい解説

アタマン

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