改訂新版 世界大百科事典 「アター」の意味・わかりやすい解説
アター
`aṭā'
〈贈り物〉を意味するアラビア語であるが,イスラム史の用語としては,ムハンマドの未亡人・親族・功労者の年金,軍人・官僚の俸給を意味する。640年ウマル1世が,メディナと各ミスル(軍営都市)にディーワーンを設けて支給を開始した。アラブ戦士(ムカーティラ)のアターは年額で最高2000から最低300ディルハムで,大部分は最低額を割り当てられ,ほかにリズクを支給された。ミスルに移住してアターを支給されるのは,アラブの特権とみなされていたが,ムフタールは反乱(ムフタールの乱,685)に際しマワーリーにもアターを支給し,それはウマイヤ朝カリフ,ウマル2世によって政府の政策とされた。アッバース朝初期の正規軍ホラーサーニーの指揮官は月額2000,兵士は80,高級官僚は300,下級官僚は30ディルハムのアターを支給され,ホラーサーニーには臨時の特別支給もあった。アラブ戦士のアターは,アッバース朝カリフ,マームーン(在位813-833)の時代に廃止された。
→ガニーマ
執筆者:嶋田 襄平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報