改訂新版 世界大百科事典 「ガニーマ」の意味・わかりやすい解説
ガニーマ
ghanīma[アラビア]
イスラム法で,戦利品,とくに動産の戦利品を意味するアラビア語。バドルの戦の直後の啓示(コーラン8:41)は,〈戦利品として取ったものmā ghanimtumのフムス(1/5)はアッラー,使徒,近親者,孤児,貧者および旅人に属する〉として,戦利品の1/5をムハンマドに差し出し,残りの4/5を戦士間で分配することを定めた。これがイスラムのフムス制度の始まりで,のちフムスを取る権利はカリフによって継承された。コーランでは動詞ガニマghanimaが1回,名詞マグナムmaghnamの複数形マガーニムmaghānimが4回使われただけで,ガニーマという語は見えない。しかしイスラム法では,ガニーマとファイとが戦利品を意味する用語とされ,ファイが戦士によって分配されることのない不動産を意味するのに対し,最終的にガニーマは,その4/5が戦士たちによって分配され,1/5であるフムスは政府によって徴収される動産の戦利品(家財道具,武器,軍馬を含む)を意味するにいたった。
→アター →リズク
執筆者:嶋田 襄平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報