アチェ族(読み)アチェぞく(その他表記)Aceh

翻訳|Aceh

改訂新版 世界大百科事典 「アチェ族」の意味・わかりやすい解説

アチェ族 (アチェぞく)
Aceh

インドネシアスマトラ島北端のアチェ州総人口の約60%(約130万)を占め,新マレー人に属する民族。アチン族ともいう。彼らの話すアチェ語はアウストロネシア語族に属する。民族の起源は不明で,チャム族やモン・クメール族との親縁性も指摘されているが,確証はない。奴隷として多数移入されたニアス族との混血も見られ,さらに東西交通の要衝に位置したため多数渡来したインド,西アジアの諸民族との血縁・言語・文化的混交も見られる。インドネシアでも有数の敬虔なイスラム教徒として知られ,アチェ戦争でオランダの侵略に対する長期の抵抗を可能にした原動力は,イスラム教徒としての結束力であった。この一体意識はインドネシア独立後,ダウド・ブレエに指導され,イスラム国教化政策をとらない中央政府からの分離・独立を主張したダルル・イスラム運動(1953-61)を生み,アチェ地方が特別州として大幅な自治権を承認される主要因ともなった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アチェ族」の意味・わかりやすい解説

アチェ族
アチェぞく
Achenese

インドネシア,スマトラ島の北部に住む一民族。人口約 260万と推定される。マレー人,インド人との混血が著しい。言語はオーストロネシア語族のインドネシア語派に属する。稲作生業とし,杭上家屋に居住する。 13世紀にイスラム教徒となり,15~16世紀頃,海上貿易によって勃興し,スルタンのもとに封建諸侯の統治が行われた。 19世紀のアチェ社会は,王族貴族農民,宗教集団,奴隷などに階層分化されていたが,これはほぼ崩壊し,現在では貧富の差が大きな意味をもち,貴族と平民とに分れる。かつては父系的な氏族組織をもっていたが,徐々に双系制に移行し,婚姻は妻方居住制をとり,女性の地位は比較的高い。イスラム教シャーフィイー派を信仰し,イスラム法が社会に浸透している。

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世界大百科事典(旧版)内のアチェ族の言及

【スマトラ[島]】より

… 民族は地域により複雑である。西岸沖合ニアス島のニアス族,本島中部のバタク族などはプロト・マレー系であるが,北部のアチェ族,西部高原のミナンカバウ族,南部のランポン族,東海岸のマレー人などはいずれも開化(第2次)マレー系である。このほか海岸各地にインド・アラブ系,中国系住民もおり,南部にはジャワ族の集団移住地もみられる。…

※「アチェ族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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