改訂新版 世界大百科事典 「アックルシウス」の意味・わかりやすい解説
アックルシウス
Accursius
生没年:1183ころ-1263ころ
イタリアの法学者。フィレンツェ周辺の農村の出。ボローニャ大学でアゾAzoなどについて法学を修め,同大学の教授職に就いた。ローマ法大全に対する統一的なコンメンタール,いわゆる《標準注釈Glossa ordinaria》により,イルネリウス以来およそ150年にわたる注釈学派の仕事を集大成した。全体で10万近い注釈から成り,先学たちの間に生じた論争を引合いに出し,これに対する態度決定を行っている。膨大な作品であるにもかかわらず,わずかに122ほどの注釈について相互矛盾が指摘されるにとどまる。13世紀後半には文字どおり標準的コンメンタールとしての権威を獲得し,法学と法実務に決定的な影響を及ぼし,その権威はイタリアをはじめヨーロッパの大部分で中世の終りまで,またかなり多くの地では,17世紀に入ってまで保持された。たとえばドイツでは,継受されたローマ法に関して,〈(アックルシウスの)注釈の認めざるものは法廷もこれを認めず〉という有名な格言が生まれている。
執筆者:佐々木 有司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報