日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフリカマダイ」の意味・わかりやすい解説
アフリカマダイ
あふりかまだい / アフリカ真鯛
阿弗利加真鯛
African red bream
southern common seabream
[学] Pagrus africanus
硬骨魚綱スズキ目タイ科マダイ亜科に属する海水魚。セネガルからアンゴラまでのアフリカ北西岸に分布する。体は楕円(だえん)形でよく側扁(そくへん)する。両顎(りょうがく)の前部には上顎に4本、下顎に6本の犬歯があり、下顎の中央の1対は小さい。両顎の側部には2列の臼歯(きゅうし)があり、その前部にそれぞれ3~4本の円錐歯(えんすいし)がある。眼隔域(左右の目の間隔域)の鱗(うろこ)は中央よりやや前方に伸びる。背びれ棘(きょく)部中央下の横列鱗(りん)数は5枚、側線鱗数は52~53枚と少なく、腹びれ軟条が長いなどの点で、この属の他種と区別できる。最大全長は75センチメートルに達する。体は鮮紅色で、鮮やかな小青色点が多数散在する。胸びれの基部直上の体側の無鱗域にくさび形の黒色斑紋(はんもん)がある。尾びれの後縁はマダイのように黒くはない。普通、大陸棚および水深200メートルまでの陸棚斜面の礫(れき)、砂、泥の底層に生息する。若魚は成魚より沿岸近くにすむ。産卵は9月ごろから始まる。おもに貝類をかみ砕いて食べ、また魚類なども餌(えさ)にする。雌性先熟型の雌雄同体魚である。底引網で多量に漁獲され、冷凍魚として相当量が輸入され、商品名はチダイ、チコダイ、オオダイ、マダイなどとして流通している。体形や体色は近縁のマダイによく似ており、肉の味もよく、利用法もほぼ同じである。本種は1962年(昭和37)に魚類学者の赤崎正人(あかざきまさと)(1926―1999)により新種として記載された。ヨーロッパマダイも近縁の魚である。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年7月19日]