アプラナート(英語表記)aplanat

改訂新版 世界大百科事典 「アプラナート」の意味・わかりやすい解説

アプラナート
aplanat

回転対称光学系で,球面収差コマ収差が除去され,そのため光軸付近でほぼ一様に鮮鋭な像を結ぶものをいう。この種のレンズでは色収差も同時に除去されているのがふつうである。現実の実用的レンズはすべてアプラナートと考えてよい。放物面鏡では,光軸上で無限遠物体に対し球面収差は完全に0であるがコマ収差が残存する。このため,例えばヘール天文台アメリカ)の,回転放物面を利用した口径200インチ(508cm),口径比1:3.3の反射望遠鏡でも,主鏡焦点面で使用できる画面はわずか直径20mmにすぎない。
収差
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アプラナート」の意味・わかりやすい解説

アプラナート
あぷらなーと
Aplanat

収差補正状態によってレンズの種類を表すことば。光軸上の点から出た光線が光軸上の点に完全に集まらない球面収差と、光軸から少し外れた点から出た光線が光軸外の像点に完全に集まらないコマ収差の、二つの収差を同時に除いたレンズをアプラナートという。大きな開きの光線を使って、光軸の近くの物体を結像するレンズは、球面収差、コマ収差を除くことが必要で、アプラナートであることが望ましい。

 最近のレンズでは、ことさらこの名称を用いなくても、これらの収差を補正することは常識となっている。

[三宅和夫]

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世界大百科事典(旧版)内のアプラナートの言及

【アナスティグマート】より

…写真レンズのように広い画角にわたって像が一様に鮮鋭であるためには,球面収差とコマ収差が除去されただけでは不十分で,さらに非点収差と像面湾曲が十分に除かれている必要がある。球面収差とコマ収差が除かれた回転対称の光学系はアプラナートと呼ばれるが,色収差がなく,非点収差と像面湾曲の両収差の除去も十分に行われたアプラナートをアナスティグマートという。語源的には非点収差が除去されているの意である。…

【レンズ】より

…共軸球面系にあっては,光軸のまわりの対称性から,収差は球面収差,コマ収差,非点収差,像面の湾曲および歪曲の五つに分類できる。球面収差とコマ収差を実用上十分に補正したレンズをアプラナート,さらに非点収差,像面湾曲を含めた四つの収差を実用上十分に補正したレンズをアナスティグマートという。 有限の直径をもった単レンズには収差が必ず残存する。…

※「アプラナート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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