日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘール天文台」の意味・わかりやすい解説
ヘール天文台
へーるてんもんだい
Hale Observatories
アメリカの天文台。ウィルソン山天文台とパロマ山天文台をあわせてヘール天文台とよんでいたが、現在では別組織になっている。
ウィルソン山天文台はロサンゼルスの北東50キロメートル、標高1742メートルの高地にあり、天文学者ヘールの尽力により1904年太陽観測所として発足、1917年に口径257センチメートル反射望遠鏡が完成、ハッブルの星雲の研究はじめ、恒星の内部構造と星雲宇宙の構造の研究などに成果をあげた。ウィルソン天文台は、カリフォルニア工科大学に所属し、同大学の研究者が運営・研究しており、カリフォルニア州との協力で口径10メートルの望遠鏡を2台建設し観測が進められている。
パロマ山天文台はサン・ディエゴ郊外、標高1706メートルの地にあり、1948年に口径508センチメートルの大望遠鏡が設置された。これはヘール望遠鏡とよばれ、ソ連(現、ロシア)の600センチメートル望遠鏡が完成するまでの28年間、世界最大の望遠鏡であり、その大集光力を利用して銀河の研究、恒星スペクトルの研究など、他の追随を許さない研究を進めてきた。ここには補正板口径126センチメートル、主鏡口径183センチメートルのシュミット望遠鏡もあり、6度角四方に写った数十万個の天体のなかから特異な天体を拾い出し、ヘール望遠鏡で詳しく調べるという共同作業が進められている。
[磯部琇三 2015年5月19日]