アポ酵素(読み)あぽこうそ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アポ酵素」の意味・わかりやすい解説

アポ酵素
あぽこうそ

補酵素と結合することによって酵素活性を示す酵素タンパク質をいう。酵素はタンパク質からできているが、タンパク質以外の物質を不可欠な構成成分として含む場合もある。そのような物質を補欠分子族補欠分子団)あるいは配合団という。ある種の補酵素、たとえばFMNフラビンモノヌクレオチド)やFADフラビンアデニンジヌクレオチド)などがこれにあたる。このような酵素から補欠分子族を取り外すと、残ったタンパク質部分だけでは酵素活性がなくなるが、補欠分子族を加えると活性が回復する。このような場合に、酵素活性をもたないタンパク質部分のことをアポ酵素という。アポapoとは「取り除いた」という意味である。これに対して、補欠分子族を結合している状態をホロ酵素という。ホロholoとは「全体」という意味である。NAD(ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド)や補酵素Aを補酵素とする酵素の場合は、これらは酵素の構成成分ではなく、反応のときだけ参加して補助するので、アポ酵素とかホロ酵素などのことばは使わない。

 なお、酵素以外のタンパク質でも、ヘモグロビンなどで、ヘムを取り除いた残りの部分をアポタンパク質とよぶ。

[笠井献一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アポ酵素」の意味・わかりやすい解説

アポ酵素
アポこうそ
apoenzyme

酵素が複合蛋白質 (単純蛋白質+補欠分子族) である場合,この単純蛋白質部分をアポ酵素という。複合蛋白質である完成酵素をホロ酵素 holoenzymeいい,一般にホロ酵素となって初めて活性を生じるが,遺伝子デオキシリボ核酸によって直接に規定されるのはアポ酵素のアミノ酸配列順のみである。

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