アルクメネ(読み)あるくめね(英語表記)Alkmēnē

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルクメネ」の意味・わかりやすい解説

アルクメネ
あるくめね
Alkmēnē

ギリシア神話の英雄ヘラクレスの母。ミケナイ(ミケーネ)王エレクトリオンの娘。彼女は、兄弟の死に復讐(ふくしゅう)するということを条件として、父を殺したアンフィトリオンと結婚した。夫がその復讐の戦いに出かけている間に、彼女は夫の姿をしたゼウスと交わった。帰国後それを知った夫はアルクメネを殺そうとしたが、ゼウスの力に妨げられて果たせず、妻を許した。やがて彼女はゼウスとの子ヘラクレスと、アンフィトリオンとの子イフィクレスを生んだ。ヘラクレスの死後、彼女はミケナイ王エウリステウスの迫害を受けてアテナイアテネ)へ逃げ、エウリステウスが死ぬとテーベに住んで長く生きた。死後、その体は至福の島へ運ばれ、冥界(めいかい)の判官ラダマンテスの妻となった。

[小川正広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルクメネ」の意味・わかりやすい解説

アルクメネ
Alkmēnē

ギリシア神話の英雄ヘラクレスの母。ミケーネ王エレクトリュオンの娘で,従兄弟にあたるアンフィトリュオンと結婚したが,彼と夫婦の契りを結ぶ前に,ゼウスが遠征中のアンフィトリュオンの姿で彼女と交わった。このときゼウスは楽しみを長くするため,3日の間太陽を空にのぼらせないで,夜を続けさせたという。このあと遠征から凱旋したアンフィトリュオンは妻の不貞に気づき,彼女を焼殺そうとしたが,ゼウスが雨を降らして火を消し,アルクメネを救った。その結果アルクメネは,ゼウスの種によるヘラクレスとアンフィトリュオンの種によるイフィクレスとの双子息子を生んだ。死後,彼女はゼウスのはからいで至福者の島に住まわされ,そこでラダマンチュスと結婚したとも,天に上げられて神々の仲間入りを許されたともいわれる。

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