日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルノビウス」の意味・わかりやすい解説
アルノビウス
あるのびうす
Arnobius
(?―327)
アフリカのシカの著名な弁論家。初めはキリスト教に激しく反対していたが、のちに回心してキリスト教徒となる。異教を攻撃するため、『諸国民への論駁(ろんばく)』Adversus nationesを書いた。論述にあたって、彼は『新約聖書』を引用せず、他のキリスト教の著作にも言及することが少なく、むしろ非キリスト教的著書から多く影響を受けている。そのためこの著作は、キリスト教の教義について教えるところは多くはないが、当時の異教の諸宗教については、豊富な情報を提供する貴重な文献となっている。この著作のために、彼は4世紀キリスト教護教家の一人に数えられる。
[門脇佳吉 2017年11月17日]