アルノビウス(読み)あるのびうす(英語表記)Arnobius

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルノビウス」の意味・わかりやすい解説

アルノビウス
あるのびうす
Arnobius
(?―327)

アフリカシカの著名な弁論家。初めはキリスト教に激しく反対していたが、のちに回心してキリスト教徒となる。異教を攻撃するため、『諸国民への論駁(ろんばく)』Adversus nationesを書いた。論述にあたって、彼は『新約聖書』を引用せず、他のキリスト教の著作にも言及することが少なく、むしろ非キリスト教的著書から多く影響を受けている。そのためこの著作は、キリスト教の教義について教えるところは多くはないが、当時の異教の諸宗教については、豊富な情報を提供する貴重な文献となっている。この著作のために、彼は4世紀キリスト教護教家の一人に数えられる。

[門脇佳吉 2017年11月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルノビウス」の意味・わかりやすい解説

アルノビウス
Arnobius

[生]? 北アフリカ
[没]326頃
ディオクレチアヌス帝 (在位 284~305) 時代のローマの修辞学者。初めは異教徒としてキリスト教に反対。のちキリスト教に改宗し護教家となる。7巻に及ぶ主著"Adversus nationes"は異教徒に対する論駁であるが,聖書の引用やキリスト教教理の詳しい説明を避け,主として異教の内部的矛盾,特にギリシア的あるいは新プラトン主義的な擬人神論,神話的説明,さらにプラトンの霊魂転生説,想起説の不合理性を批判した。また本書の後半は当時の異教の事情をよく伝えており,結局全体としてキリスト教というよりは異教についての著作といえる。護教家ラクタンチウスはその弟子

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