イオセリアーニ(読み)いおせりあーに(その他表記)Otar Davidovich Iosseliani

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオセリアーニ」の意味・わかりやすい解説

イオセリアーニ
いおせりあーに
Otar Davidovich Iosseliani
(1934―2023)

ジョージアグルジア)出身の映画監督、脚本家。旧ソ連邦のジョージア共和国(現、ジョージア)の首都トビリシ生まれ。幼くして絵画を学び、トビリシ音楽院で作曲、指揮、ピアノを修めた後、モスクワ大学応用数学科を2年で中退し、全ソ連邦国立映画大学監督学部で、ウクライナの叙情派監督アレクサンドル・ドブジェンコAlexander Dovzhenko(1894―1956)に師事する。在学中からジョージアフィルムで編集技師をつとめたり、ニュース映画を監督していた。卒業制作の中編『四月』(1962)は「抽象的、形式主義的」との理由で上映禁止。その後3年間冶金(やきん)工場などで現場労働につく。ワイン工場で働く若者のなにげない日常をみずみずしく描いた長編デビュー作『落葉』(1966)も上映禁止となるが、1968年にカンヌ国際映画祭で紹介され、国際批評家連盟賞を受賞して国際的に注目を集めた。しかし、以後の作品、『歌うつぐみがおりました』(1970)や『田園詩』(1976)などもすべて公開禁止または限定公開処分を受けたため、ソ連邦での映画製作を断念して1979年、パリへ移住。テレビ用の16ミリ記録映画を数本撮った後、『月の寵児(ちょうじ)たち』(1984)、『そして光ありき』(1989)、『群盗、第七章』(1996)、『素敵な歌と舟はゆく』(1999)、『月曜日乾杯!』(2002)、『汽車はふたたび故郷へ』(2010)などを撮り、いずれも国際映画祭で高い評価を受けた。彼の映画は、月並みな日常のなかで、額縁舞台に出入りするような人物の動きを、丹念にゆったりとしたミディアムロングのワンショット・ワンシーンの綿密なカメラワークで描き、ときに異なった時空を同一ショットでとらえる手法を用いて、独自の寓意(ぐうい)的風刺の効いた作品をつくりあげている。

[田中 陽]

資料 監督作品一覧(日本公開作)

四月 Aprili(1962)
落葉 Giorgobistve(1966)
歌うつぐみがおりました Iko shashvi mgalobeli(1970)
田園詩 Pastorali(1976)
蝶採り La Chasse aux papillons(1992)
群盗、第七章 Brigands, chapitre VII(1996)
素敵な歌と舟はゆく Adieu, plancher des vaches!(1999)
月曜日に乾杯! Lundi matin(2002)
ここに幸あり Jardins en automne(2006)
汽車はふたたび故郷へ Chantrapas(2010)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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