2012年に登録された世界遺産(文化遺産)。イラン南部の都市イスファハーンの中心部に位置するモスク。マスジッド・ジャメは、金曜日に礼拝を行うための「金曜モスク」を意味し、イスラム教の街には必須の施設だが、イスファハーンのマスジッド・ジャメは、アッバース朝(8~13世紀)の841年、2ha以上の敷地に建築が始まったイスファハーン最古のモスクであり、イラン最古の金曜モスクである。その後、ブワイフ朝・セルジューク朝と時代を経るごとに改修と増築が重ねられたために、種々の建築様式が混在することになり、12世紀に及ぶモスク建築の発展の様を示している。特に11~12世紀のセルジューク朝の帝国拡張期に大改装が行われ、中庭に向いた建物の四方に4つのイーワーン(丸屋根付きの半ドームの開口部)を備え、天井にリブを施した内殻と外殻の二重ドームを2つ備えた様式が採用され、これが、その後のイスラム様式の建築物の典型的な様式となった。また鍾乳石状の小さな曲面を集合し、ドーム先端に凹曲面を作るムカルナスや籠上のアーチネットによってドームを分割する様式も、イスラム世界で初めて採用され、その後の主流となっていったという点でも先駆的なモスクである。◇英名はMasjed-e Jāmé of Isfahan