日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
再生可能エネルギーの固定価格買取制度
さいせいかのうえねるぎーのこていかかくかいとりせいど
電力会社に固定価格で再生可能エネルギーの買取りを義務づける制度。固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)ともいう。再生可能エネルギー普及政策の一環として、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(略称は再生可能エネルギー法、平成23年法律第108号)に基づいて、2012年(平成24)7月1日より開始された。本制度は、太陽光、風力、中小型の水力、地熱、バイオマスによって発電された電気を、一定の期間、固定価格で買い取ること、再生可能エネルギー電気を優先的に使うことを、発電事業者に対して義務づける制度である。本制度によって、再生可能エネルギーによる発電技術開発が促進され、設備量産化によるコストダウンを可能にするとともに、日本のエネルギー自給率向上、地球温暖化対策、産業育成が図られることが期待されている。
買取価格と期間が担保されるため、再生可能エネルギー電気の供給側にとっては、設備投資等の必要なコストの回収の見込みがたてやすくなるといったメリットがあるが、その費用は需要家(産業や一般家庭等)全体が負担することとなる。発電事業者が買い取った再生可能エネルギー電気は、送電網を通じて電気として需要家に供給され、電気事業者が再生可能エネルギー電気の買取りに要した費用は、電気料金の一部として、使用電力に比例した「再生可能エネルギー賦課金」という形で国民が負担する。再生可能エネルギー賦課金の単価は上昇傾向にある。制度導入当初2012年度は、全国平均でキロワット時当り0.22円(一般標準世帯では1か月当り57円程度)であったが、2021年度(令和3)は3.36円(同873円程度)となっている。
一方の買取価格・期間は低下傾向にある。発電事業者による買取価格・期間については、再生可能エネルギー源の種類や規模などに応じて、中立的な第三者委員会(調達価格等算定委員会)が公開の場で審議を行い、その意見を受けて、経済産業大臣が告示する。再生可能エネルギーの種類ごとに、通常必要となる設置コストなどの実態を反映して、原則として毎年度見直しを行う。2021年度の新規参入者向けキロワット時当りの買取価格と固定買取期間は、太陽光発電が11~19円/10年~20年(2012年度34~42円)、風力が15~36円/20年(2012年度22~55円)、水力が12~34円/20年(2012年度24~34円)、地熱が12~40円/15年(2012年度26~40円)、バイオマスが13~40円/20年(2012年度13~39円)である。
なお、再生可能エネルギーの全体発電量に占める割合は、FIT制度の創設以降、2.6%(2011年度)から10.3%(2019年度)に増加している。制度以前から開発が進められている水力を含めると、10.4%から18.1%にまで増加する。
再生可能エネルギー法の施行に伴い、2003年4月に施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS制度)は廃止された。また、住宅などに設置された太陽光発電からの余剰電力を一定価格で電力会社が買い取る制度である「太陽光発電の余剰電力買取制度」(2009年11月施行)は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」へ移行し、旧制度で売電していた設備は新制度の設備認定を受けたものとされ、新制度下にて従来と同条件で買取りが継続されている。
[小川順子 2022年2月18日]