改訂新版 世界大百科事典 「イタチガヤ」の意味・わかりやすい解説
イタチガヤ
Pogonatherum crinitum(Thunb.)Kunth
日当りのよい山の斜面に生える小型のイネ科の多年草。和名の鼬茅(いたちがや)は黄褐色の毛の生えた穂をイタチに見立てた。茎は細いが硬く,密生して株を作る。茎の高さは10~20cm,節に毛があり,基部に硬い鱗片がある。葉は茎の節につき,短い披針形で長さは5cm以下,幅は4mmほどで,鮮緑色をしている。夏から秋にかけて,1個の穂状の花序が茎の頂に出る。穂は短い円柱状で,立ち,長さは2cm前後,白い毛が密生するが,これに混じる芒(のぎ)が黄褐色で全体にきつね色に見える。長さ2mm以下の小さい小穂が密生している。アジアの暖帯から熱帯に広く分布し,インド,マレーシア,中国の中南部から日本では本州の和歌山県以西,四国,九州,琉球にある。全草を中国では薬用とし,解熱などに用いる。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報