家庭医学館 「イヌ・ネコ回虫症」の解説
いぬねこかいちゅうしょうないぞうようちゅういこうしょう【イヌ・ネコ回虫症(内臓幼虫移行症) Toxocariasis(Visceral Larva Migrans)】
子イヌやネコに多く感染している回虫の成熟卵が口から入ることでおこる病気です。砂場の砂に混入した虫卵(ちゅうらん)が手について感染する例がとくに多くみられます。
また、鶏や牛のレバー肉を生食して感染することもあります。
成熟卵が体内に入って孵化(ふか)しても成虫とはならず、幼虫のまま全身の臓器に移行するため、内臓幼虫移行症(コラム「幼虫移行症とは」)ともいいます。幼虫は肝臓や目などいろいろな臓器に入り込みます。
[症状]
幼虫が移行する部位によって内臓移行型(ないぞういこうがた)と眼内移行型(がんないいこうがた)に分けられます。
内臓移行型では、発熱、肺炎、肝臓の腫(は)れがみられ、血液を調べると好酸球(こうさんきゅう)(白血球(はっけっきゅう)の一種)の増加がみられます。
眼内移行型では視力障害や失明(しつめい)など目の病気をおこします。
子どもで、肝臓が腫(は)れて好酸球の増加が持続し、気管支ぜんそく、発熱などをともなうときは、この病気の疑いが濃厚です。
また、視力障害や眼部の違和感があるときもこの病気が疑われます。
[検査と診断]
からだの外から臓器に針を刺して組織を少しとり、そこから幼虫が検出されれば確実に診断できます。ただし、この検査はむずかしいので、実際には血清反応(けっせいはんのう)を調べて診断します。
また、超音波検査や眼底検査も行なわれます。
[治療]
チアベンダゾール、メベンダゾール、ジエチルカルバマジンが有効ですが、副作用がありますから、必ず専門医の診察を受けましょう。眼内移行型では光凝固(ひかりぎょうこ)や硝子体(しょうしたい)手術も行なわれます。
[予防]
砂場で遊んだ後やペットに触れた後は、よく手を洗う習慣をつけることです。虫卵は室内のほこりの中にもまじっていることがありますから、よく掃除をすることもたいせつです。また、イヌやネコを飼うときは、獣医さんに相談して回虫の駆虫(くちゅう)をしてもらいましょう。