俗に〈ガラス体〉ともいう。眼球の中,正面からみて水晶体より奥で眼底,網膜へ達するまでの空間を満たす物質。約4cm3あり,眼球容積の3/4を占める。99%が水分(硝子体液)であり,わずかな繊維成分(硝子体繊維)がこれを保持して,ゲル状となっている。硝子体繊維は網膜や水晶体に接する部分では厚くなり,硝子体膜hyaloid membraneをなす。硝子体は,眼底まで可視光線を到達させるほか,網膜を内側からささえて眼球の形状を維持し,水晶体,網膜などの代謝産物の通路ともなっている。発生上,眼球の成長,容積の増大などにかかわる重要な組織で,胎生第6週~7ヵ月までの間,ここには硝子体動脈があって,水晶体などに血液を供給するが,8ヵ月までには大部分消失する。
硝子体繊維は普通は見えないが,ときに網膜に影をつくり,自覚されることがある。白紙,青空など明るい視野で感じられやすく,糸くず,虫,水玉などと表現される。これが飛蚊(ひぶん)症vitreous floaters(myodesopsia)である。検査によって明らかになったものは硝子体混濁vitreous opacityというが,病的である場合とそうでない場合がある。病的なものは,網膜裂孔形成,ぶどう膜炎による滲出物や,眼底血管病変による出血や増殖物などが原因となって起こり,治療の対象となる。一方,病的でないものは,網膜に接した硝子体膜がはがれて浮きあがる状態(硝子体剝離(はくり)vitreous detachment)になったり,繊維成分と水分との分離(シネレシスsyneresis)によって硝子体繊維が不均一になることが原因である。これらは老化に伴う生理的現象なので,治療は無意味である。
→眼
執筆者:小林 義治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
眼球の内容物で透光体の一部、すなわち水晶体の後方から網膜の前面までの腔所(くうしょ)を満たしているゲル状の組織であり、眼内容積の約3分の2を占める。胎児の硝子体の中には血管などいろいろな組織があり、眼球の発育に重要な役割を担っているが、生後はまったく透明な組織となる。発育を終わった眼球の中での硝子体の働きの一つは、外力が加わったときのショック吸収装置である。年齢とともに硝子体の構造は変化し、老人になると水分と有形成分との分離が進行する。
[松井瑞夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ところが対照的に赤道部,周辺部は,網膜は後極部より薄くなり,組織の変性が起こりやすいが,病変は自覚されにくい。硝子体の病的癒着も高率にみられる。赤道部変性と呼ばれる変化がその代表である。…
…外膜は角膜と強膜,中膜は虹彩,毛様体および脈絡膜,内膜は網膜からなり,中膜全体をぶどう膜ともいう。眼球の内容の大部分は硝子体で満たされ,その前方には水晶体があり,水晶体の周囲と角膜にいたるすきまである前房は房水で満たされる。虹彩の中央には円形の穴すなわち瞳孔がある。…
※「硝子体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新