日本大百科全書(ニッポニカ) 「イヌ糸状虫」の意味・わかりやすい解説
イヌ糸状虫
いぬしじょうちゅう
canine heartworm
[学] Dirofilaria immitis
線形動物門双腺綱糸状虫目に属する寄生虫。イヌのフィラリアともいう。成虫はそうめんのように細長く、雄の体長12~18センチメートル、雌25~30センチメートル。イヌの右心室に寄生するが、まれにヒトに寄生することもある(日本ではヒトの肺から幼若虫が摘出された症例など)。
雌は血液中にミクロフィラリアとよばれる幼虫を産み出す。ミクロフィラリアは体長約0.25ミリメートルで、夜間に末梢(まっしょう)血管に現れ、トウゴウヤブカなどのカに吸われて一定の発育ののち、ふたたびカがイヌを吸血するときにイヌの体内に入り、いったん皮下組織や筋膜下などの中間発育場所で発育してから、静脈を経由して右心室へ移り成虫になる。成虫の寄生により血液循環障害、それに続く肝硬変、腹水などをおこし、朝夕の冷気にあたったり、急激な運動後に発作性の咳(せき)をする。対策としては、イヌをカの刺咬(しこう)から避けることは実際上不可能なので、イヌの体内に入った糸状虫の幼虫をマクロライド系薬剤を用いて殺滅する方法がとられ、感染は著しく減少した。
[町田昌昭]