糸状虫(読み)シジョウチュウ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

糸状虫
しじょうちゅう
filarial worm

線形動物門双腺(そうせん)綱糸状虫目に属する寄生虫の総称。フィラリアともいう。体は細長く糸状で、雄は雌よりも小さい。脊椎(せきつい)動物の循環器、体腔(たいこう)、筋肉などに寄生し、卵胎生によりミクロフィラリアという幼虫を産む。発育環には中間宿主として吸血昆虫を必要とする。日本にはヒトや家畜の糸状虫としてヒトのバンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、イヌのイヌ糸状虫、ウマの頸部(けいぶ)糸状虫、ウシの指状(しじょう)糸状虫などが知られ、熱帯地方にはヒトの回旋糸状虫、ロア糸状虫などが存在する。
 バンクロフト糸状虫Wuchereria bancroftiは、熱帯、亜熱帯地方に分布し、日本では沖縄、九州、四国などにみられたが、2010年の時点で患者の発生はない。成虫はヒトのリンパ管に寄生し、雄で長さ2~5センチメートル、雌で7~10センチメートル。雌から産み出された幼虫(ミクロフィラリア)は長さ0.3ミリメートルで、リンパや血流にのり全身を循環する。ミクロフィラリアは夜間末梢(まっしょう)血液中に現れ、中間宿主のアカイエカなどが吸血するときにカの体内に取り込まれ、一定の発育をしたのち、ふたたびカが吸血するときヒトの体内に入る。ミクロフィラリアが末梢血液中に多数現れるのは、カが活動する夜間で、これをミクロフィラリアの定期出現性とよぶが、その原因ははっきりわかっていない。[町田昌昭]

脳脊髄糸状虫症

ウシの腹腔に寄生する指状糸状虫Setaria digitataのミクロフィラリアが中間宿主のカを介して、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの体内に入ると、幼虫はウシ以外の非固有宿主では成虫に発育できずに体の中をあちこち移動し、脳脊髄に侵入すれば脳症状や後肢の運動麻痺(まひ)をおこす。このようにある種の糸状虫が吸血昆虫により非固有宿主に伝播(でんぱ)された場合、幼虫が脳脊髄に入って脳炎など中枢神経症状の原因になると考えられる。[町田昌昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の糸状虫の言及

【フィラリア】より

…線形動物双腺綱糸状虫上科Filarioideaに属する寄生虫の総称。糸状虫ともいう。…

※「糸状虫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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