日本大百科全書(ニッポニカ) 「イマ」の意味・わかりやすい解説
イマ
いま
Yima
古代ペルシア神話における王。インド神話におけるヤマに対応する。中世ペルシア語文献および近世ペルシア語民族叙事詩『シャー・ナーメ』(王書)においては、ジャムシードの名で現れる。ゾロアスター教聖典『アベスタ』では、イマ・クシャエータ(輝けるイマ)と表現されているように太陽王と考えられていたが、インド神話ではヤマは死者の世界の支配者として描かれ、仏教における閻魔(えんま)につながる。イマは約600~700年在位したとされ、その治世中に不老不死、不寒不暑の黄金時代を築き、神からの栄光で人類、悪魔、妖精(ようせい)までも支配した。しかし聖典によると、晩年には人間に牡牛(おうし)の肉を食べさせたため、また叙事詩によれば、尊大になって神を崇(あが)めず、自らを創造主とよばせようとしたために神の栄光が消え去り、100年間の放浪のすえ、ついに悪神アフリマンの命令で鋸(のこぎり)によって切断された。また叙事詩では、魔王ザッハークによって殺されたという。今日、ペルセポリスはタフテ・ジャムシード(ジャムシードの王座)とよばれてイマの偉業が伝えられ、イランの新年(ノウルーズ)(春分の日)は彼によって始められたと信じられている。
[黒柳恒男]