改訂新版 世界大百科事典 「イロカノ族」の意味・わかりやすい解説
イロカノ族 (イロカノぞく)
Ilokano
フィリピンのいわゆる平地キリスト教民の一グループで,ルソン島北部の西海岸のイロコス・ノルテ,イロコス・スール両州およびカガヤン河谷などに住み,イロカノ語を話す。人口約468万(1975)で,セブアーノ族,タガログ族に次いで第3位,総人口の11%を占める。その性向は他の諸族に比して勤勉で忍耐強く,生活は質素で倹約家であるといわれる。料理にはイワシなどの小魚を塩漬にしたバゴオンと呼ばれる調味料を頻繁に用い,野菜を煮ておかずとすることを好む。基本的な生業は稲作であるが,土地に対して人口が稠密なため,19世紀からカガヤン河谷への大規模な移住が行われ,近年では中部ルソン,ミンダナオ島,さらにはハワイやアメリカ本土に新天地を求めて移民となる者が多い。また商品作物としてのタバコ栽培が盛んで,フィリピンの紙巻タバコの80%以上(1970)を生産している。イロカノ族出身者のなかには,マルコス大統領をはじめ,政府や軍の要職に就いている者が多い。
執筆者:清水 展
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報