ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウイルス癌遺伝子」の意味・わかりやすい解説 ウイルス癌遺伝子ウイルスがんいでんしoncogene 1908年に V.エルマンと O.バウグはニワトリに白血病を起させるウイルスを報告した。このウイルスは遺伝子として RNAをもち,通常とは逆に RNAから DNAを合成する逆転写酵素をもつのでレトロウイルスと呼ばれている。レトロウイルスにはこのように細胞を癌化させる遺伝子をもつものがあり,この遺伝子をウイルス癌遺伝子と呼んでいる。現在ウイルス癌遺伝子は 20種類近くも知られている。これと同じ構造をもつ遺伝子が魚からヒトまで脊椎動物の正常な細胞にも存在することがわかっている。これは細胞癌遺伝子と呼ばれ,最近ではウイルス癌遺伝子ももとは正常細胞の遺伝子であることがわかり,さらにこうした癌遺伝子は多種の動物に広く分布していることから,細胞の増殖・分裂や分化・発生のために重要な働きをしていると考えられるようになった。膀胱 (ぼうこう) 癌のなかには,癌遺伝子の一部が変化して起ったと思われるものがあり,またリンパ腫の一部には染色体異常により mycという癌遺伝子が活発に働いていることもわかっている。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報 Sponserd by