ウィルムット(その他表記)Wilmut, Ian

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウィルムット」の意味・わかりやすい解説

ウィルムット
Wilmut, Ian

[生]1944.7.7. ウォリックシャー,ハンプトンルーシー
[没]2023.9.10.
イアン・ウィルムット。イギリスの発生生物学者。世界初の哺乳類のクローンであるヒツジの「ドリー」を誕生させた(→クローン羊)。
イングランド中部ウォリックシャーのハンプトンルーシーに生まれ,ノッティンガム大学で農業を学ぶ。1967年に大学を卒業後,ケンブリッジ大学に移り,の凍結保存を研究,1973年に凍結胚から最初の子牛「フロスティ」を誕生させる。1973年,スコットランドのロスリンにある畜産研究機構(現ロスリン研究所)の上級科学責任者となる。数々の試行錯誤を経てクローンの作製実験を行ない,1996年7月5日,成体細胞からドリーを誕生させることに成功する。1997年2月にドリー誕生が発表されると,科学と倫理をめぐる議論が起こった。同年,血友病患者がもたないヒト遺伝子を発現するよう遺伝子操作を行なったクローン羊「ポリー」も誕生させた。2000年,ロスリン研究所遺伝子発現・開発部門の責任者に就任。胚発生を制御する遺伝子メカニズムが人間の疾病に果たす役割を研究した。2005~12年,エディンバラ大学の生殖科学主任教授。2002年エルンスト・シェリング賞,2005年パウル・エールリヒ&ルートウィヒ・ダルムシュテッター賞を受賞。2000年にエディンバラ・ロイヤル・ソサエティ,2002年にロンドン・ロイヤル・ソサエティのフェローとなり,2007年にはナイト爵位を授与された。『ネイチャー』『サイエンス』など一流誌に掲載された論文のほかに,『第二の創造─クローン羊ドリーと生命操作の時代』The Second Creation: Dolly and the Age of Biological Control(2000。共著),『ドリーのその後:ヒト・クローニングの活用と誤用』After Dolly: The Uses and Misuses of Human Cloning(2006。共著)などの著書がある。

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