日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウインドウ期」の意味・わかりやすい解説
ウインドウ期
ういんどうき
window period
ウイルスなどの病原体に感染してから、検査で検出できるようになるまでの空白期間。ウインドウ・ピリオドともいう。実際には感染しているにもかかわらず、この期間に行う血液検査では、結果が陰性(偽陰性)を示すことになる。
献血された血液からつくられる血液製剤の製造過程では、その安全性確保のために、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV、エイズの原因となるウイルス)などの感染の有無を調べる検査が行われている。しかし、感染初期の血液では、血中の病原体はごく微量で、抗体や病原体の量が検査の検出限界を下回ることがあり、ウインドウ期とはこの期間のことをさす。検査法の開発や改良によって以前より短縮されているものの、ウインドウ期を完全になくすことはできず、このため、輸血による感染症の発症リスクもゼロにすることはできない。このことから、厚生労働省や日本赤十字社は、献血協力者に対し、輸血による感染症の実情をよく認識し、献血を感染症の検査目的に利用せず、「責任ある献血」を行うよう呼びかけている。
なおHBV、HCVおよびHIVのウインドウ期は、核酸増幅検査(NAT)の導入により、HBVで34日(HBs抗原による検査では59日)、HCVで23日(HCV抗体による検査では82日)、HIVで11日(HIV抗体による検査では22日)程度となっている。
なお、献血目的以外の通常の肝炎ウイルス検査やHIV検査においても同様に、ウインドウ期に行った場合には偽陰性となる可能性があり、感染の機会に心当たりのある場合には、おのおののウインドウ期を過ぎてから検査を行うことが勧められる。
[編集部 2018年11月19日]