人の血液から製造した医薬品。血液や、血液から分離した血球や成分を使った「輸血用血液製剤」と、
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ヒトの血液を原料とした医薬品で、血液そのものの全血製剤、血液をその構成成分別に分離して製した血液成分製剤、血漿(けっしょう)を特殊な方法で分画して製した、血漿分画製剤(アルブミン、グロブリンおよびグロブリンに化学的処理を施したもの、血液凝固因子など)の三つに分けられる。
[幸保文治]
手術時の出血ややけど、ショック、低タンパク血症などに用いられる。日本薬局方人全血液(ひとぜんけつえき)(旧称保存血液)。人全血液CPD(旧称CPD加新鮮血液)と、輸血による移植片対宿主(しゅくしゅ)病(GVHD:graft versus host disease)を予防する目的で15グレイ以上50グレイ以下の放射線を照射した照射人全血液CPDがある。
[幸保文治]
それぞれ不足した血液成分を補うために用いられるもので、人赤血球濃厚液、洗浄人赤血球浮遊液、白血球除去人赤血球浮遊液、解凍人赤血球濃厚液、解凍人赤血球浮遊液、新鮮液状人血漿、新鮮凍結人血漿、人血小板濃厚液のほか、ABO式血液型不適合による新生児溶血性疾患に用いる合成血がある。合成血とは、人血液から血漿の大部分を除去したO型の赤血球層を生理食塩液で洗浄した後、AB型の人血漿を加えて製した血液製剤のことである。
[幸保文治]
(1)免疫機能の低下している患者に感染予防や治療のために用いられるもの
人免疫グロブリン、乾燥イオン交換樹脂処理人免疫グロブリン、乾燥スルホ化人免疫グロブリン、pH4処理人免疫グロブリン、乾燥pH4処理人免疫グロブリン、乾燥ペプシン処理人免疫グロブリン、ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン、乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン。
(2)血友病の治療に用いられるもの
乾燥人血液凝固第Ⅷ因子、乾燥濃縮人血液凝固第Ⅷ因子、乾燥人血液凝固第Ⅸ因子複合体、乾燥濃縮人血液凝固第Ⅸ因子。
(3)B型肝炎の予防と治療に用いられるもの
抗HBs人免疫グロブリン、乾燥抗HBs人免疫グロブリン、乾燥ポリエチレングリコール処理抗HBs人免疫グロブリン、抗D(Rh0)人免疫グロブリン、乾燥抗D(Rh0)人免疫グロブリン。
(4)その他
抗破傷風人免疫グロブリン、乾燥抗破傷風人免疫グロブリン、乾燥ポリエチレングリコール処理抗破傷風人免疫グロブリンといった破傷風の予防と治療に用いられるもののほか、乾燥濃縮人アンチトロンビンⅢ、加熱人血漿タンパク、人ハプトグロビン、人血清アルブミン、乾燥人フィブリノゲン、活性化プロトロンビン複合体がある。また、特殊なものとして遺伝性血管神経性浮腫の急性発作に用いられる乾燥濃縮人C1-インアクチベータ、先天性プロテインC欠乏症に起因する深部静脈血栓症、急性肺血栓塞栓症の治療薬として乾燥濃縮人活性化プロテインCがある。
血液製剤はすべて保存温度と有効期間が定められている。
なお日本では、輸入血液を原料とする血液凝固因子製剤の加熱製剤化が1985年(昭和60)まで遅れたうえ、非加熱製剤の回収が不徹底でその後2年間も使用されたため、HIV(エイズウイルス)感染を引き起こし、いわゆる薬害エイズ問題が発生したが、その後は加熱製剤の使用により薬害は防止された。
また、止血の目的で使用された輸入フィブリノゲン製剤によるC型肝炎の感染も社会問題となっている。
血液製剤はヒトの血液からつくられていることから、その取扱いに倫理的観念からの配慮が必要であり、すべての血液製剤について自国内での自給を目ざすことが国際的な原則となっている。そのためには血液製剤の適正使用が求められる。厚生省(現、厚生労働省)では1986年(昭和61)「血液製剤の使用適正化基準」を設け、血液製剤の国内自給の達成を目ざした。一方、使用者としての医療機関に対しては1989年(平成1)「輸血療法の適正化に関するガイドライン」がつくられ、1994年には「血小板製剤の使用基準」、1999年には「血液製剤の使用指針」および「輸血療法の実施に関する指針」が示された。さらに2003年(平成15)3月には、国内自給率の向上と感染の可能性を削減するために、血液製剤の国内完全自給、安全性の確保および適正使用を目的とした「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」が施行された。「血液製剤の使用指針」には血液製剤の使用のあり方として、血液製剤の原則、血液製剤使用上の問題点と使用指針のあり方、各製剤ごとの使用指針の考え方、が述べられており、各製剤ごとの適正使用として、目的、使用指針、授与量、不適切な使用、使用上の注意点など、具体的に記されている。
これらの施策により1992年には濃縮凝固因子製剤の国内自給が達成され、アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤の自給率も飛躍的に向上したが、いまだ新鮮凍結血漿などの血液使用量は諸外国に比べて多いので、さらなる縮減が望まれている。
[幸保文治]
『野村武夫著『輸血・血液製剤療法の正しい知識』(1998・全日本病院出版会)』▽『伊藤和彦著『血液製剤――感染・同種免疫との戦い』(1999・共立出版)』▽『喜多村悦史著『血液の基礎知識――血液事業の歴史と方向』第2版(1999・都市文化社)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ヒトの血液を原料に生産された医薬品.広い意味では全血や血球製剤も含まれるが,一般には血漿を分画して得られるタンパク質製剤(血液凝固因子製剤,アルブミン製剤,免疫グロブリン製剤)をいう.ウイルス混入の危険がつきまとうため,遺伝子工学的生産に切り替えられつつある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…これを生理的食塩液で洗浄し液性成分を洗い流した洗浄赤血球,フィルターを用いて白血球を除去した白血球除去赤血球,超低温で凍結した冷凍血液(解凍赤血球)を二次製剤として調製する。このように分離調製された血液を血液製剤という。 赤血球輸血は慢性貧血,外科手術前後の輸血,妊娠末期の貧血,外科手術による出血などに用いられる。…
※「血液製剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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