金属について同一温度の熱伝導度κと電気伝導度σとの比をとると、その値は金属の種類によらず一定になるという法則。ウィーデマンおよびフランツRudolph Franz(1827―1901)によって1853年に発見された。κ/σの実験値に測定温度T(K=絶対温度)を掛けた値は、金属の種類によらず、ウィーデマン‐フランツの定数
2.44×10-8(V/K)2
に近い値をとる(Vはボルト)。この法則は、金属中の電子のふるまいが自由電子モデルによってよく説明できることの例としてあげられる。
[野口精一郎]
熱伝導率κの電気伝導率σに対する比は,同一温度のもとでは金属の種類によらず同じ値をもつという法則.これは1853年にG. WiedemannとR. Franzによって実験的に発見された.理論的には最初,P.K. Drudeが金属の自由電子の運動を古典統計で扱い,この法則を導いた.のちにA.J. Sommerfeldはそれを修正して量子統計力学のもとに次のような結果を得た.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…その後カールスルーエ工科大学などの教授を経て,71年にはライプチヒ大学においてドイツ最初の物理化学教授職についた。1853年フランツRudolph Franz(1827‐1901)と共同で,金属の熱伝導度と電気伝導度との比は同一温度においては金属の種類によらず一定であるというウィーデマン=フランツの法則を発見,またJ.C.ポッゲンドルフの後を継いで《物理学および化学年報》の編集を行ったほか,19世紀の電磁気学に関する集大成《ガルバーニ電気学》《電気学》を著した。【宮下 晋吉】。…
…物質中の自由電子の概念は,20世紀の初め,ドイツのドルーデPaul Karl Ludwig Drude(1863‐1906)とH.A.ローレンツが,金属の価電子が自由電子のガスとして存在すると考えると,金属の電気伝導,熱伝導,光学的性質などをおおよそ説明できることを示したのが最初である。このような考え方を古典自由電子模型と呼んでいるが,この成功の一つは,金属の電気伝導度と熱伝導度との比は同一温度では金属の種類によらず同一の値をもつというウィーデマン=フランツの法則を説明できたことである。しかし,自由電子の古典的なガスの模型では,金属の比熱や常磁性帯磁率などについては実験と矛盾し,またなぜ電子が格子間隔の数百倍の距離を,あたかも真空中にあるのと同じように自由に運動できるかということも説明できない。…
…一般に,多くの物質の中で金属の熱伝導率は大きい。金属の場合,電気の良導体ほど熱伝導率は大きく,同一温度では熱伝導率と電気伝導率の比は,金属の種類によらずほぼ一定になる(ウィーデマン=フランツの法則)ことが知られている。銀,銅,金などはとくに熱伝導率が大きい。…
…
[古典物理学の限界]
しかし,L.ボルツマンの気体分子運動論が予言した気体の比熱は実験値より大きく,分子が回転すべくして回転しないことを暗示していた。P.K.L.ドルーデの金属電子論(1900)は,一定温度の下で金属の電気伝導率と熱伝導率の比が金属の種類によらず一定になるというウィーデマン=フランツの法則を首尾よく説明したが,金属の比熱の計算値は実験とけた外れに違ってしまった。さらにラジウムの発見(キュリー夫妻,1898)はエネルギーの保存をはじめとして力学,熱力学を根底からゆるがした。…
※「ウィーデマンフランツの法則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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