実験で発見されている素粒子がもつ電荷(電気量)は,0,±e,±2eのごとく,最小単位eの整数倍の値に限られている。ここでeは電子の電荷の絶対値を表し,
e=1.602177×10⁻19C=4.803201×10⁻10esu
である。このeを電気素量という。電子の電荷の測定としては,油滴を用いたミリカンの実験(ミリカンの油滴実験ともいう)が有名である。この実験はアメリカの物理学者R.A.ミリカンが1909年から始めたもので,微小な油滴が空気中を運動するとき,油滴に働く力と空気の粘性力のつりあいにより,油滴が一定速度で動くことを利用する。まずX線をあてて油滴を帯電させる。重力の作用で油滴を落下させ速度を測れば,ストークスの粘性の法則から油滴の半径がわかる。次に上向きに電場をかけて油滴を上昇させ速度を測れば,油滴の電荷がわかる。同一の油滴に何回もX線をあて測定を繰り返すと,油滴が帯電する電荷はつねに最小単位の整数倍であることが確かめられ,その最小単位としてeの値が得られるのである。
陽子,中性子,π中間子など大多数の素粒子は,ハドロンと呼ばれる族に属している。現在の素粒子論では,ハドロン族の素粒子は,クォークおよび反クォークという粒子が何個か集まってできた複合粒子と考えられている。クォークは電荷2e/3,または-e/3をもち,反クォークは電荷-2e/3,またはe/3をもつ。その意味で,電気素量はeからe/3に変わったわけである。しかし,ハドロンの内部からクォークを取り出して直接観測する実験は,まだ成功していない。クォークがハドロンの内部にだけ実在するものとすれば,直接観測される電気素量はeのままでよいことになる。
執筆者:加藤 正昭
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電気量の素量.記号e.基本物理定数の一つ.すべての電気量はこの素量の正または負の整数倍である.現在もっとも新しい値は
e = 1.602176487(40)×10-19 C.
電子および陽子の電荷の絶対値に等しい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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