電気素量(読み)デンキソリョウ(その他表記)elementary electric charge

デジタル大辞泉 「電気素量」の意味・読み・例文・類語

でんき‐そりょう〔‐ソリヤウ〕【電気素量】

正・負の電気量の最小単位電子1個または陽子1個のもつ電気量の絶対値で、1.602176634×1019クーロン。すべての電気量はこの整数倍として現れる。素電荷単位電荷電荷素量記号e
[補説]2019年5月20日に施行された国際単位系SI)の改定において、電気素量は不確かさのない物理定数となり、電流単位であるアンペア定義に用いられる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「電気素量」の意味・読み・例文・類語

でんき‐そりょう‥ソリャウ【電気素量】

  1. 〘 名詞 〙 電荷の最小単位。電子一個のもつ電気量に等しく、すべての電気量はその整数倍の値をとる。記号e 〔自然科学的世界像(1938)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「電気素量」の意味・わかりやすい解説

電気素量 (でんきそりょう)
elementary electric charge

実験で発見されている素粒子がもつ電荷(電気量)は,0,±e,±2eのごとく,最小単位eの整数倍の値に限られている。ここでeは電子の電荷の絶対値を表し,

 e=1.602177×10⁻19C=4.803201×10⁻10esu

である。このeを電気素量という。電子の電荷の測定としては,油滴を用いたミリカンの実験(ミリカンの油滴実験ともいう)が有名である。この実験はアメリカの物理学者R.A.ミリカンが1909年から始めたもので,微小な油滴が空気中を運動するとき,油滴に働く力と空気の粘性力のつりあいにより,油滴が一定速度で動くことを利用する。まずX線をあてて油滴を帯電させる。重力の作用で油滴を落下させ速度を測れば,ストークスの粘性の法則から油滴の半径がわかる。次に上向きに電場をかけて油滴を上昇させ速度を測れば,油滴の電荷がわかる。同一の油滴に何回もX線をあて測定を繰り返すと,油滴が帯電する電荷はつねに最小単位の整数倍であることが確かめられ,その最小単位としてeの値が得られるのである。

 陽子,中性子,π中間子など大多数の素粒子は,ハドロンと呼ばれる族に属している。現在の素粒子論では,ハドロン族の素粒子は,クォークおよび反クォークという粒子が何個か集まってできた複合粒子と考えられている。クォークは電荷2e/3,または-e/3をもち,反クォークは電荷-2e/3,またはe/3をもつ。その意味で,電気素量はeからe/3に変わったわけである。しかし,ハドロンの内部からクォークを取り出して直接観測する実験は,まだ成功していない。クォークがハドロンの内部にだけ実在するものとすれば,直接観測される電気素量はeのままでよいことになる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「電気素量」の意味・わかりやすい解説

電気素量【でんきそりょう】

素電荷とも。電気量の最小単位。すべての電気量は電気素量の正または負の整数倍に等しい。電子,陽子など荷電素粒子の電荷の絶対値に相当。記号e。1.6021773クーロンまたは4.803207×10(-/)1(0/)CGS静電単位。しかし素粒子のさらに基本的構成単位であるクォークの存在を仮定する最近の素粒子論では,クォークの電荷はe/3ないし2e/3(正負とも)でありうるとしているが,単独のクォークは観測されていないので,電気素量eのままでよいことになる。→電子ミリカン
→関連項目ストーニー定数電荷普遍定数

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電気素量」の意味・わかりやすい解説

電気素量
でんきそりょう
elementary electric charge

電気量量子を表わす普遍定数。記号は e。素電荷ともいう。原子定数の一種。値を次に示す。

e=1.602176634×10-19C

すべての電気量は e の整数倍(正または負)である。電子陽子など荷電素粒子の電荷の絶対値は電気素量に等しい。電気素量の存在は,1891年,電気分解の研究を行なうジョージ・ジョンストン・ストーニーによって提唱された。そして 1909年,ロバート・アンドリュース・ミリカンが行なった油滴実験によって存在が証明され,その値が算出された。e の値は今日では原子定数の多くの測定値から算出されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「電気素量」の解説

電気素量
デンキソリョウ
elementary electric charge

電気量の素量.記号e.基本物理定数の一つ.すべての電気量はこの素量の正または負の整数倍である.現在もっとも新しい値は

e = 1.602176487(40)×10-19 C.
電子および陽子の電荷の絶対値に等しい.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電気素量」の意味・わかりやすい解説

電気素量
でんきそりょう

電荷

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android