改訂新版 世界大百科事典 「ウェルツェル」の意味・わかりやすい解説
ウェルツェル
Hans Welzel
生没年:1904-77
西ドイツの刑法学者。ボン大学教授。刑法学での目的的行為論finale Handlungslehreの代表的な主張者である。これは,行為を〈目的活動〉とし,行為概念の中核に〈目的性〉をおく行為論であって,既成の犯罪論を再構成しようとする意図をもっている。この理論の重要な帰結は,これまで責任要素とされていた故意(たとえば,人を殺すことの認識・意図)を,行為の本質的要素であるとし,したがって,故意行為と過失行為とは本質的に異なるもので,故意は主観的違法要素であると解する点にある。さらに目的的行為論は,このように故意を責任論から排除することによって,違法性の意識の可能性を,故意から独立した責任要素として把握する見解(責任説)を理論的に基礎づけることができると主張するのである。
→刑法理論
執筆者:内藤 謙
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報