日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウマバエ」の意味・わかりやすい解説
ウマバエ
うまばえ / 馬蠅
[学] Gasterophilus intestinalis
昆虫綱双翅(そうし)目環縫亜目ウマバエ科に属する昆虫。ハエ類中では大形種で、体長12~17ミリメートル。体は黄褐色で、体表は黄色の軟毛で覆われ、一見ハチやハナアブに似ている。口器は退化し、鱗弁(りんべん)も小さい。翅脈の第3縦脈は直線的である。成虫は1年に1回発生し、食物をとることなく、ウマの足や腹部の毛に産卵する。幼虫は、ウマになめられた刺激で卵殻からはい出て、ウマの口中に入る。1齢幼虫は口腔(こうこう)内に一時とどまったのち、3~4週間後に胃に達して、胃壁や十二指腸壁に口鉤(くちかぎ)で付着し、栄養を吸収して成熟する。成熟幼虫は体表に多くの棘(とげ)をもち、糞(ふん)とともに排出され、土中に潜って蛹化(ようか)する。3~10週間後に新成虫が羽化する。世界中のウマの産地に分布するが、日本ではまれな種である。ウマバエ科のハエの多くは、宿主となる草食動物が多産するアジア大陸、アフリカ大陸に分布するので、これらの地域から日本の動物園に輸入された動物に、外国産の種類がしばしばみつかる。
[倉橋 弘]