改訂新版 世界大百科事典 「ウミシダ」の意味・わかりやすい解説
ウミシダ (海羊歯)
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ウミユリ綱ウミシダ目Comatulidaに属する棘皮(きよくひ)動物の総称,またはニッポンウミシダの別名。ウミシダ類はすべて海産で,植物のシダの葉のような形をした腕が10~100本輪生しているところから名付けられた。俗称コマチ。体の中央にはまるくて小さい体部があって,その中に消化管が内蔵されており,口と肛門は体の上面に開いている。体の下側から20~50本も根のような巻枝が生じ,これらで岩につかまって生活する。腕は最初放射状に5本生じ,それらが根もとのところで数回枝分れする。おのおのの腕には細かい羽枝が両側からでて羽のようになっていて,この腕が網の働きをして水中のプランクトンを集め口へ運ぶ。雌雄異体。生殖腺は羽枝内に発達する。卵と精子は水中で受精し,俵状の幼生になって一時浮遊生活をしたあと,前端を底面につけて倒立したペンタクリノイド幼生になるが,その後再び自由生活に入る。日本近海はウミシダの種類の豊富な海域で100種以上が知られている。ウミシダの体には環形動物のスイクチムシ類,多毛類,カニ,エビ,クモヒトデ類など多くの種類が共生したり,外部寄生している。ニッポンウミシダComanthus japonica(=Oxycomanthus japonica)は体の上面が黒褐色で,羽枝の末端と背面は橙色,長さ15cmほどの腕が40本前後ある。本州中部以南に分布し,潮間帯下の岩棚などにふつうに見られる。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報