正極にオキシ水酸化ニッケルNiOOH、負極に鉄Fe、電解液には水酸化カリウムKOHを用いるアルカリ蓄電池の一種である。1901年にアメリカのエジソンとスウェーデンのユングナーWaldemar Jungner(1869―1924)によってほとんど同時に発明され、1908年にエジソンがチューブ式正極を開発して実用化したためエジソン電池とよばれている。ニッケル蓄電池ともいう。アルカリ蓄電池として最初に開発された電池系である。放電反応は以下のように示され、正極の放電反応はニッケルカドミウム蓄電池やニッケル水素蓄電池と同じである。
(正極)
NiOOH+H2O+e-―→Ni(OH)2+OH-
(負極)
Fe+2OH-―→Fe(OH)2+2e-
さらに放電が進むと
3Fe(OH)2+2OH-―→Fe3O4+4H2O+2e-
の反応がおこる。なお深放電末期ではFeOOH、Fe2O3なども生成することが知られている。しかし、通常はFeとFe(OH)2との間で放電がおこるように鉄負極の容量を過剰にしている。充電反応はこれらの逆である。起電力は1.4ボルト、放電中の平均電圧は1.2ボルトで、ニッケルカドミウム蓄電池とほぼ同じである。
オキシ水酸化ニッケル正極は、当初チューブ式電極が用いられたが、その後焼結式電極、ついで発泡メタル式電極(非焼結式電極)が使用され、高容量化が図られた。また鉄負極はポケット式が実用化された。しかしその後比表面積の大きい海綿状の高純度鉄粉末を水と増粘剤でスラリー(粉砕物の懸濁液)化し、電極支持体へ塗着後焼結する方法が採用され、負極特性が改善された。そしてセパレーターにはナイロンやポリプロピレンなどの織布や不織布などが用いられ、電解液には放電容量の向上と自己放電を少なくするために硫化カリウムや五酸化アンチモン、スルファミン酸などを添加した20~35%KOH水溶液が用いられた。
原材料が安価であり、低コストで製造することが期待できるため、わが国では通商産業省(現経済産業省)の大型工業化技術開発制度に基づいて、1971~77年(昭和46~52)に電気自動車用エジソン電池の開発研究が行われた。そしてエネルギー密度として77.5kWh/kgが得られ、500回以上の充放電サイクル寿命が達成されたが、長期間放置した場合の自己放電が大きく、放電容量だけでなく放電電圧も低下し、実用化にあたって大きな課題が残った。また充電時に鉄負極から水素ガスの発生がみられ、電池の完全密閉化が困難で、定期的補液を必要とした。しかし、これらを解決できる有効な技術対策が得られず、現在ではほとんど生産されていない。
[浅野 満]
『電気化学会編『電気化学便覧』(2000・丸善)』▽『小久見善八・池田宏之助編著『はじめての二次電池技術』(2001・工業調査会)』▽『名和小太郎著『起業家エジソン――知的財産・システム・市場開発』(2001・朝日新聞社)』
…ニッケル‐カドミウム電池は陽極活物質に酸化水酸化ニッケルNiO(OH),陰極活物質にカドミウムCdを用いたアルカリ蓄電池で,電極の製造法の違いにより,ユングナー電池と焼結式蓄電池に分けられる。陰極活物質としてCdの代りに鉄Feを用いたものがエジソン電池で,そのほか酸化銀‐亜鉛蓄電池,酸化銀‐カドミウム蓄電池,アルカリマンガン蓄電池などがある。充電した状態から起電力が終止電圧(鉛蓄電池では1.8V程度)に達するまでに放電された総電気量,すなわち電流と時間の積の総和を蓄電池の容量といい,単位はAhで示す。…
※「エジソン電池」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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