硫化カリウム(読み)りゅうかかりうむ(英語表記)potassium sulfide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化カリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化カリウム
りゅうかかりうむ
potassium sulfide

カリウム硫黄(いおう)の化合物。カリウムの一硫化物である。単に硫化カリウムというと普通は一硫化物をさし、他はポリ硫化物とよばれる。硫化ナトリウムと同様、硫化水素カリウム溶液に当量の水酸化カリウム溶液を作用させると五水和物を得ることができる。水素気流中で加熱脱水すると無水和物となる。そのほか、カリウムと硫黄を直接あるいは液体アンモニア中で反応させる方法、硫酸カリウム炭素または水素で還元する方法がある。工業的には炭酸カリウムと硫黄を二対一に混合し、融解して製造する。無色、潮解性の結晶性粉末。空気中で容易に酸化されて黄色を呈する。工業製品(硫肝(りゅうかん))はポリ硫化物K2Sx(xは2、3、4、5など)を含むため黄緑色ないし褐色を呈する。水のほかエタノール(エチルアルコール)、グリセリン、液体アンモニアに溶ける。水溶液は強アルカリ性で、酸を加えると硫化水素を発生する。ほかに二および12水和物がある。角質を溶かす作用があるので皮膚病の治療に用いられる。

[鳥居泰男]


硫化カリウム(データノート)
りゅうかかりうむでーたのーと

硫化カリウム
  K2S
 式量  110.3
 融点  840℃
 沸点  ―
 比重  1.805(測定温度14℃)
 結晶系 立方

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化カリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化カリウム
りゅうかカリウム
potassium sulfide

化学式 K2S 。液体アンモニア中で硫黄とカリウムを反応させて得られる。無色立方結晶であるが,工業製品はポリ硫化カリウムを含み,黄緑色を呈し,硫肝と呼ばれる。吸湿性が強く不安定。衝撃あるいは急速な加熱により爆発することがある。融点 840℃。水に易溶。水溶液は強アルカリ性を呈する。5水塩は無色斜方晶系柱状晶である。硫化水素臭がある。空気および光に触れると黄ないし赤黄色に変色する。

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