エチアンブル(読み)えちあんぶる(その他表記)René Etiemble

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エチアンブル」の意味・わかりやすい解説

エチアンブル
えちあんぶる
René Etiemble
(1909―2002)

フランスの比較文学者、評論家、小説家。『ランボー神話』(1952~59)で学位を得、パリ大学で比較文学を講じた。広く中近東極東とフランスの思想交流に強い関心をもち、ユネスコ刊行の翻訳叢書(そうしょ)を監修した。『東遊記』(1958)、『孔子』(1962)のほか、評論集に『文芸衛生学』5巻(1952~67)、小説に『聖歌隊少年』(1938)、『蛇の皮』(1948)、『肉体紋章』(1961)などがあり、人間研究家(モラリスト)として傑出した存在であった。1978年パリ大学退官後、その文筆活動はいっそう旺盛(おうせい)になり、『日本の小説をどう読むか』(1980)、『ヨーロッパにおける中国』2巻(1987、89)、『世界文学新論』(1992)などを著した。

岩崎 力]

『小西茂也訳『聖歌隊の少年』(1953・新潮社)』『山本功訳『肉体の紋章』(1962・新潮社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エチアンブル」の意味・わかりやすい解説

エチアンブル
Étiemble, René

[生]1909.1.26. マイエンヌ
[没]2002.1.7. パリ近郊ビニー
フランスの比較文学者,批評家,小説家。シカゴ大学 (1939~43) ,アレクサンドリア大学 (1944~48) ,モンペリエ大学 (1949~56) でフランス文学を教え,1956年からパリ大学の比較文学教授。広範かつ深い学識と飛躍を恐れぬ豊かな想像力とをあわせもった特異な文学者。活動は多彩で,学問的研究のみにとどまらず,大胆な発想による小説,評論を多数発表した。主著,小説『聖歌隊の子供』L'Enfant de chœur (1937) ,『蛇の皮』 Peaux de couleuvre (1948) ,詩人ランボーを世界的視野に立って研究した大論文『ランボー神話』 Le Mythe de Rimbaud (1952~59) ,評論『文学の衛生学』 Hygiène des lettres (1952~67) 。

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