キリスト教会における歌い手の共同体。カトリック教会の公用語ではスコラ・カントルムschola cantorumで,ローマに最初につくられて以来,合唱団であると同時に音楽教育機関であった。教会と聖歌の発展にともなって,専門的な歌手の団体が必要となり生まれたものであるが,過度の芸術化はしばしば会衆からの遊離をもたらした。カトリックでもプロテスタントでも,原則的には全会衆が共同して歌うことがすすめられてきた。パウロは信徒たちへの手紙でそのことを明らかにしているし,ルターやカルバンの改革の精神でもそれが強調されている。カトリックの第2バチカン公会議での〈典礼憲章〉でも,とくに聖歌隊の任務として,聖歌の進歩向上のみでなく,信者の全集団が行動的に参加できるよう配慮すべきことが明らかにされた。
世界的に有名な聖歌隊にはシスティナ礼拝堂聖歌隊,レーゲンスブルク大聖堂聖歌隊,モンセラート修道院聖歌隊などがあげられる。大聖堂や修道院が特別に訓練された聖歌隊をもつのは当然であり,宗教的と同時に最高度の芸術的伝統が示される。日本では東京カトリック神学院の100人に余る全神学生が毎日曜ごとにグレゴリオ聖歌による〈ミサ・ソレムニス〉を行い,大祝日には多声部合唱でさらに祝典的雰囲気をもり上げている。
キリスト教以外でも聖歌の語は用いられ,仏教における聖歌隊の育成もしだいに実り,独自の世界を開拓しつつある。
執筆者:野村 良雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キリスト教教会の礼拝に奉仕する合唱団。『旧約聖書』には、ダビデ王の時代に、レビ人とよばれた祭司を補佐する人々が聖歌隊を組織していたことが記されている。そのユダヤ教の礼拝様式は、初期のキリスト教徒たちに受け継がれるが、聖歌隊や先唱者は、会衆とともに歌による礼拝を盛り上げた。その後、典礼の整備や聖歌の洗練化が進むと、会衆の参加が少なくなり、聖歌などは訓練された歌い手や聖歌隊に任せられるようになった。とくにローマ教会では、4世紀以後スコラ・カントルムとよばれる歌唱学校が各地に設けられ、聖歌の教授と熟練した歌い手の養成が図られた。一方、宗教改革時のプロテスタント教会の場合も、一般信徒の間に賛美歌を教えていったのは、訓練を受けた歌い手や聖歌隊であったといわれている。
今日、ローマ・カトリック教会、ギリシア正教会、聖公会、ドイツ・ルーテル教会などの礼拝を重視する諸教会では、聖歌隊が礼拝に欠くことのできない存在となっている。各教会における聖歌隊の役割は、キリスト教の神を賛美するという点では同一であるものの、実際の礼拝に占める比重や編成・規模などは、教義や典礼観に左右され多様である。
今日では、ドイツのライプツィヒ聖トーマス教会聖歌隊、レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊、フランスのソレム修道院聖歌隊、スペインのモンセラート修道院聖歌隊、アメリカのソルト・レーク・シティのモルモン会堂聖歌隊などが、世界的にその名を知られている。
[磯部二郎]
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