〈衛生〉の語は英語のhygiene,ドイツ語のHygieneの邦語訳として,明治初期に長与専斎が《荘子》からとってつけたものである。衛生学は,狭義には医学の一分野として国民の健康の維持向上を目的とする学問で,外界の要因や先天的要因について研究する。外界の要因としては,細菌,ウイルス,害虫などの生物学的,日照,気温,気圧,湿度などの物理学的,有害ガス,毒物などの化学的な要因のほかに,社会的環境も対象として含まれる。歴史的に,伝染病予防,環境改善,社会医学,公衆衛生などの重点の移動はあったが,その時,その国における健康保持,疾病防止の課題を対象として展開されてきた。衛生統計,精神衛生,食品衛生,環境衛生,疫学および伝染病予防,母子衛生,学校衛生,産業衛生,衛生行政など広範な分野がある。衛生学は実践的な学問で,理化学,工学などの手法,行政や医療保障など社会科学的な分野も含め,積極的に健康時の生活の合理化をはかり,生命を延長させ,人生の質を高めさせようとする点に特徴がある。
→公衆衛生
執筆者:溝口 勲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
臨床医学、基礎医学に対応する医学の一分野で、疾病の予防、健康の保持と増進、寿命の延長などのための自然科学的、社会科学的原理を研究する科学であり、またこれを実地に適応する技術である。衛生学hygieneは、古代ローマのギリシア出身の医師ガレヌスGalenus(129?―199)がギリシア神話の健康の女神ヒギエラHygieràにちなんで命名したといわれる。日本で「衛生」という用語を初めて用いたのは、1875年(明治8)、内務省初代衛生局長となった長与専斎(ながよせんさい)(1838―1902)であり、彼はこれを今日の公衆衛生学と同じ意味に用いていたようである。衛生学は前述のようにその範囲はきわめて広いが、さらにその対象や領域別に、環境衛生学、農村衛生学、都市衛生学、産業衛生学、食品衛生学などと分けることもある。また、衛生学と公衆衛生学とは同様に考えても差し支えないが、しいて相違点をあげれば、衛生学は、野外調査を主とする公衆衛生学に対して、実験を主とし、より基礎学的な色彩が強いということができよう。
[重田定義]
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…すなわち〈公衆衛生とは,地域社会において組織化された社会的努力を通じて疾病を予防し,生命を延長し,住民すべての健康を維持し高めるための技術と科学である〉といえる。この意味で公衆衛生学とも呼ばれる。しかし,公衆衛生が社会的なひろがりのなかで,その地域住民の疾病の予防と健康の維持を目的としている点で,個々人の健康と疾病の予防を目的とする衛生学とは異なっている。…
…ドイツの衛生学者。化学的方法を衛生学に導入した最初の一人で,環境衛生の改善が死亡率を低下させるという立場から,ミュンヘンの衛生行政を著しく発展させた。…
※「衛生学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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