衛生学(読み)エイセイガク

デジタル大辞泉 「衛生学」の意味・読み・例文・類語

えいせい‐がく〔ヱイセイ‐〕【衛生学】

医学の一領域。健康の維持・増進、疾病の予防・発見を目的とする学問。対象によって、個人・公衆・環境・精神などの各衛生学に分けられる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「衛生学」の意味・読み・例文・類語

えいせい‐がくヱイセイ‥【衛生学】

  1. 〘 名詞 〙 医学の一科目。個人および社会公衆の健康維持と向上を目的とする学問。遺伝をはじめ、外界の影響について研究する。精神衛生学、優生学公衆衛生学社会衛生学予防医学ほか、学校や工場都市農村などの集団衛生学や、医事統計学などが含まれる。
    1. [初出の実例]「近年衛生学進歩し」(出典:朝野新聞‐明治一八年(1885)八月一二日)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「衛生学」の意味・わかりやすい解説

衛生学 (えいせいがく)

〈衛生〉の語は英語のhygiene,ドイツ語のHygieneの邦語訳として,明治初期に長与専斎が《荘子》からとってつけたものである。衛生学は,狭義には医学の一分野として国民の健康の維持向上を目的とする学問で,外界の要因や先天的要因について研究する。外界の要因としては,細菌ウイルス害虫などの生物学的,日照,気温,気圧湿度などの物理学的,有害ガス,毒物などの化学的な要因のほかに,社会的環境も対象として含まれる。歴史的に,伝染病予防,環境改善,社会医学,公衆衛生などの重点の移動はあったが,その時,その国における健康保持,疾病防止の課題を対象として展開されてきた。衛生統計,精神衛生,食品衛生,環境衛生,疫学および伝染病予防,母子衛生,学校衛生,産業衛生,衛生行政など広範な分野がある。衛生学は実践的な学問で,理化学工学などの手法,行政や医療保障など社会科学的な分野も含め,積極的に健康時の生活の合理化をはかり,生命を延長させ,人生の質を高めさせようとする点に特徴がある。
公衆衛生
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「衛生学」の意味・わかりやすい解説

衛生学
えいせいがく
hygiene

心身の健康の保全を研究する学問。単に病気を予防するだけでなく,個人および集団の健康を保持するとともに,身体的,精神的さらに社会的な機能を十分に発揮させ,また子孫の心身にも異常のないように,予想できるかぎりの配慮をするための理論と方法を研究する学問。その原型は先史時代の古墳やその発掘物からもうかがうことができる。有史時代になると,エジプト人は前 1600年頃,すでに腸内寄生虫,ハンセン病,眼疾患についての研究を行なっており,皮膚の清潔法や有害食物,飲用水への注意,住環境の衛生法などが実施されていたと考えられる。その後,ギリシア・ローマ時代を経て,衛生法はさらに発展し,浴場や水道,墓地などが整備された。近代に入ると,疫病の大流行や都市への人口集中などを背景に,ヨーロッパの先進国で衛生法規が整備されていった。 1866年,ペッテンコーファー Max von Pettenkofer (1818~1901) がミュンヘン大学に衛生学講座を開設し,科学としての衛生学を確立した。以後,病原微生物の発見により,病原体の滅殺,感染経路の遮断,免疫方法の開発などにより,大きな問題であった感染症対策と環境の整備が行われるようになった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「衛生学」の意味・わかりやすい解説

衛生学
えいせいがく

臨床医学、基礎医学に対応する医学の一分野で、疾病の予防、健康の保持と増進、寿命の延長などのための自然科学的、社会科学的原理を研究する科学であり、またこれを実地に適応する技術である。衛生学hygieneは、古代ローマのギリシア出身の医師ガレヌスGalenus(129?―199)がギリシア神話の健康の女神ヒギエラHygieràにちなんで命名したといわれる。日本で「衛生」という用語を初めて用いたのは、1875年(明治8)、内務省初代衛生局長となった長与専斎(ながよせんさい)(1838―1902)であり、彼はこれを今日の公衆衛生学と同じ意味に用いていたようである。衛生学は前述のようにその範囲はきわめて広いが、さらにその対象や領域別に、環境衛生学、農村衛生学、都市衛生学、産業衛生学、食品衛生学などと分けることもある。また、衛生学と公衆衛生学とは同様に考えても差し支えないが、しいて相違点をあげれば、衛生学は、野外調査を主とする公衆衛生学に対して、実験を主とし、より基礎学的な色彩が強いということができよう。

[重田定義]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「衛生学」の意味・わかりやすい解説

衛生学【えいせいがく】

人間の健康に関係するあらゆる事象を研究し,健康の保護増進をはかる学問。公衆衛生,集団衛生(学校・労働など),予防医学疫学衛生統計,精神衛生,優生学などが含まれる。
→関連項目ペッテンコーファー

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「衛生学」の解説

衛生学

 →衛生(1)

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の衛生学の言及

【公衆衛生】より

…すなわち〈公衆衛生とは,地域社会において組織化された社会的努力を通じて疾病を予防し,生命を延長し,住民すべての健康を維持し高めるための技術と科学である〉といえる。この意味で公衆衛生学とも呼ばれる。しかし,公衆衛生が社会的なひろがりのなかで,その地域住民の疾病の予防と健康の維持を目的としている点で,個々人の健康と疾病の予防を目的とする衛生学とは異なっている。…

【ペッテンコーファー】より

…ドイツの衛生学者。化学的方法を衛生学に導入した最初の一人で,環境衛生の改善が死亡率を低下させるという立場から,ミュンヘンの衛生行政を著しく発展させた。…

※「衛生学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android