エチルベンゼン
ethylbenzene

芳香族炭化水素の一つ。引火性のある無色の液体で,融点-94.98℃,沸点136.19℃,比重0.866(25℃)。水に不溶,ほとんどの有機溶媒と均一に混ざる(溶ける)。ベンゼン,トルエン,キシレンとともに主要な芳香族石油化学製品の一つであり,広範で重要な主要化学原料である。工業的には,主として,ベンゼンを酸触媒(液相法では塩化アルミニウムなど,気相法ではリン酸-担体)を用いエチレンでアルキル化して製造される。またナフサ分解油または接触改質油中のキシレン留分に数%~30%含まれており,これを精密蒸留で分離することも一部行われている。この際,沸点差がわずか2℃のp-キシレン(沸点138.35℃)との分離には,高さ数十mの精留塔を3本直列につないだ装置が必要である。エチルベンゼンはその大部分がスチレン(合成樹脂原料)の製造に用いられる。
→キシレン
執筆者:村井 真二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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エチルベンゼン
えちるべんぜん
ethylbenzene
代表的なアルキルベンゼンで、キシレンの異性体。フェニルエタンともいう。
芳香族炭化水素に特有のにおいをもつ無色液体。石油のC8留分の成分だが、各成分は沸点が接近しているので分離はむずかしい。工業的には塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、リン酸などの触媒の存在下、ベンゼンにエチレンを吹き込んで製造する。酸化鉄‐三酸化クロム‐炭酸カリウム系脱水素触媒の存在下で600℃前後の高温に加熱すると、エチル基CH3-CH2-がビニル基CH2=CH-に変化してスチレンになる。この方法により、合成樹脂や合成ゴムの原料として重要なスチレンが工業的に製造される。エチルベンゼンは酸化すると安息香酸を与え、光塩素化でα(アルファ)-位が塩素化される。
[向井利夫]
エチルベンゼン(データノート)
えちるべんぜんでーたのーと
エチルベンゼン

分子式 C8H10
分子量 106.2
融点 -94.98℃
沸点 136.19℃
比重 0.86705(測定温度20℃)
屈折率 (n
)1.49588
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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エチルベンゼン
エチルベンゼン
ethylbenzene
C8H10(106.17).C6H5C2H5.石油精製の際のキシレン留分中に含まれるが,ベンゼンにエテンをフリーデル-クラフツ付加させて製造される.無色の液体.融点-94.4 ℃,沸点136 ℃.
0.8671.
1.4960.引火点20 ℃.多くの有機溶剤とまざる.脱水素してスチレンを製造する.[CAS 100-41-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のエチルベンゼンの言及
【キシレン】より
…いずれも可燃性の無色の液体で(燃えると芳香族化合物特有の濃いすすを出す),水にほとんど溶けず,エーテル,エチルアルコールなどに溶け,またキシレン自身も溶解力の大きい優れた溶媒である。各異性体の物性値を,同じ分子式C8H10を有する構造異性体である[エチルベンゼン]とともに表に示す。 キシレンは石油ナフサの接触改質油や石炭のタール軽油に含まれる。…
※「エチルベンゼン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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