日本大百科全書(ニッポニカ) 「エマージング市場」の意味・わかりやすい解説
エマージング市場
えまーじんぐしじょう
emerging markets
世界の経済・金融市場で、急速に勃興(ぼっこう)・台頭している国・地域や産業・業種の市場の総称。エマージングemergingは「出現、登場する」「発展途上の」という意味の英語で、「新興市場」「新興成長市場」ともよばれる。
1980年代に、中南米諸国の累積債務問題を解消するために米ドル建てで発行されたブレイディ債が登場し、この取引市場を国際金融公社(IFC)がエマージング市場と名づけたことから、新興市場の呼称となった。株式、債券などを投資対象とする市場をさす場合が多いが、消費、輸出、生産などの市場規模を意味する場合にも使われる。エマージング市場への投資や輸出などは、経済の急成長や市場の急拡大によって大きな収益を得られる可能性がある半面、政権交代や紛争、債務・金融危機、通貨・インフレ不安などのカントリー・リスクが大きいという特徴もある。対象となる国・地域は、アジア、中南米、中近東・アフリカ、ロシア・東欧など高い潜在成長力をもつ新興諸国である。なかでも豊富な人口や資源をもつ国々をグループ化したBRICs(ブリックス)(ブラジル、ロシア、インド、中国)、VISTA(ビスタ)(ベトナム、インドネシア、南アフリカ共和国、トルコ、アルゼンチン)、MENA(ミーナ)(中東・北アフリカ諸国)などの造語が2000年以降に相次いでつくられているように、こうした国や地域を投資対象とする投資信託などのエマージングファンドの設定が急増している。
また、ベンチャー企業が株式公開するアメリカのNASDAQ(ナスダック)や日本の東証グロース市場など、新興企業比率が高い取引所をエマージング市場とよぶこともある。
[編集部]