NASDAQ(読み)なすだっく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「NASDAQ」の意味・わかりやすい解説

NASDAQ
なすだっく

全米証券業協会(National Association of Securities Dealers:NASD)の管理の下、1971年2月から稼働を始めたアメリカの店頭銘柄気配自動通報システム。National Association of Securities Dealers Automated Quotationsの頭文字をとって名づけられた。今日では、このシステムを利用して取引される市場全体をさす呼称として定着している。

 NASDAQでは、マーケット・メーカーとしての証券会社が、取扱い銘柄について売り・買いそれぞれの呼び値(気配値段)をコンピュータに入力すると、その情報が端末機の画面に示される。投資家はそれらのなかからもっとも好ましいマーケット・メーカーに売買注文を出すことになる。このシステムが稼働したことで、マーケット・メーカー間の競争も促進され、店頭市場における価格形成の透明性が飛躍的に向上した。

 NASDAQは、ナスダック証券取引所(NASDAQ Stock Market, Inc.)により運営されており、同システムはアメリカ最大の店頭銘柄の電子証券取引所(electronic communication network:ECN)となっている。公開基準が緩やかであることから、ハイテク産業などのベンチャー企業にとって魅力ある資金調達の場となっており、投資家に対しても成長企業を発掘するうえで有効な機会を提供している。

 なお日本では、2000年(平成12)5月にNASDと提携したナスダック・ジャパン市場が大阪証券取引所(大証。現、大阪取引所)に開設されたが、その後NASDが日本からの撤退を決めたため、2002年12月以降は「ヘラクレス」に名称変更され、さらに、ヘラクレスは2010年10月にJASDAQに統合された。JASDAQは2013年1月の大証と東京証券取引所(東証)グループとの経営統合に伴い、同年7月以降は東証により運営されていたが、2022年(令和4)4月の東証再編により、新スタンダード市場と新グロース市場へと吸収された。

高橋 元 2023年1月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例