エリオプス(その他表記)Eryops

改訂新版 世界大百科事典 「エリオプス」の意味・わかりやすい解説

エリオプス
Eryops

イクチオステガIchthyostega類の直接の子孫として現れた重要な原始両生類迷歯類亜綱)の分椎(切椎)目ラキトム亜目に属する。脊椎の構成骨である間椎心(体)は楔(くさび)形で側椎心は円板状で小さく,両者の間に神経弓が支えられるような関係にあるのをラキトム型rhachitomousという。このような脊椎をもったラキトム類は,石炭紀から三畳紀までの各時代に北アメリカ,ヨーロッパ,アフリカを中心に栄えた。エリオプスはこのグループの典型と考えられている。

 エリオプスは北アメリカ,テキサスの二畳紀前期に出現した。体長は約1.5m。頭骨はかなり扁平で大きく,幅が広く,骨は厚く,凹凸がある。深い耳裂溝があり,口蓋には左右1対の孔が開く。脊柱は強大,肋骨は大きい。肩帯,腰帯および短いががんじょうな四肢など骨組みはしっかりしており,陸上生活によく適応していた。前肢の指は4本である。現在のワニ類に似た生活様式をとっていたと考えられる。魚食性。テキサスのカコプスCacopsやヨーロッパのブランキオサウルスBranchiosaurus類などは近縁の動物である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリオプス」の意味・わかりやすい解説

エリオプス
Eryops

ペルム紀に北アメリカに生息していた原始両生類の一属。堅固な頭骨をもつ大型両生類の迷歯類のなかでも,特に進化の頂点に達した代表的動物である。体長約 2mにも及ぶ。体つきが頑丈で,大きな頭骨は扁平になっている。大きな眼球や眼筋が,口蓋の左右両側で上方に向かって開いている大きな孔に収まっている。顎と口蓋に,先のとがった強そうな歯が並んでいる。脊柱が強大であったばかりでなく,肩も腰もがっしりしており,四肢は短いが頑丈なので,陸上生活に向いていたと思われる。しかし,四肢は胴に対し不格好な角度でついており,エリオプスの柔らかな肢の筋肉では重い体を泥から離して持ち上げて歩くのは大変なことなので,泥の中をはうように進んだと推定される。テキサスなどの沼沢地で,今日のワニに似たような生活をしていたらしい。皮膚の中に骨性の結節があったので,皮膚は外敵から体を守る鎧(よろい)の役をしたであろう。体も大きく,魚やほかの両生類や爬虫類を餌としたと思われる。エリオプスはおそらく声を出すことのできた最初の動物であった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリオプス」の意味・わかりやすい解説

エリオプス
えりおぷす
eryops
[学] Eryops megacephalus

古生代ペルム紀(二畳紀)前期の、約2億8000万年前に北アメリカにいた大形両生類の迷歯類中でも代表的な肉食動物。堅固な頭骨をもち、全長約2メートル。体が頑丈で、扁平(へんぺい)の大きな頭骨の口蓋(こうがい)の左右両側に、大きな眼球や眼筋があり、口蓋と脳頭蓋の間に強靭(きょうじん)な関節があった。強い歯をもつ。陸上生活によく適応していたことは、肩と骨盤が堅固で、脊柱(せきちゅう)が強大、肋骨(ろっこつ)も大きく、四肢が短く頑丈なことから推定される。しかし動作は緩慢で、重い体を泥から離して動かすのがやっとであった。四肢の付き方が体に対してぶかっこうな角度をなしていて、動くのに非能率的であったであろう。現生のワニ類に似た生活をしていたと思われる。皮膚の中に骨性の結節があって、これが体を外敵より保護する堅固な鎧(よろい)となった。

[小畠郁生]


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世界大百科事典(旧版)内のエリオプスの言及

【迷歯類】より

…四肢が発達し,体表はうろこでおおわれていた。石炭紀から三畳紀は迷歯類の大発展したときで,二畳紀のエリオプスEryopsはその代表種で,癒合しないラキトム型椎骨をもっている。脊椎の間椎体が大きく,側椎体が小さい。…

※「エリオプス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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