改訂新版 世界大百科事典 「迷歯類」の意味・わかりやすい解説
迷歯類 (めいしるい)
古生代デボン紀から中生代三畳紀に栄えた原始的両生類の1群(亜綱)Labyrinthodontia。有尾型四足,頭はがんじょうな骨板でおおわれた頭骨をもち,頭形は時代とともに平坦化する。堅い頭骨をもつことから,空椎類(亜綱)Lepospondyliとともに堅頭類と呼ばれる。頭骨の頂上に第三の眼といわれる頭頂(松果)孔がある。円錐形のとがった歯で,その象牙質は迷路状に入り組んだ複雑な構造をしている。このことから迷歯類と呼ばれる。総鰭(そうき)類に似たデボン紀のイクチオステガIchthyostega類が根幹型で,脊椎は骨性化が進み軀体を支持するのに適した構造になった。四肢が発達し,体表はうろこでおおわれていた。石炭紀から三畳紀は迷歯類の大発展したときで,二畳紀のエリオプスEryopsはその代表種で,癒合しないラキトム型椎骨をもっている。脊椎の間椎体が大きく,側椎体が小さい。神経弓はその中間上部にのる。半水生ないし陸生の大型種が多いが,水生魚食性のものもいた。体長30~150cmくらいが普通だが,ブランキオサウルスBranchiosaurusは小型で全長4cm大である。三畳紀には大型の水生迷歯類が出現する。これらは椎骨が間椎体だけで神経弓と癒合しない。頭は扁平で大きく,眼は上方を向く。マストドンサウルスMastodonsaurusでは頭骨長だけで1mをこえる。比較的体や尾は短く,四肢は退化した。三畳紀の後期には少数のプラギオサウルス類(亜目)Plagiosauriaがみられる。これらは幅が広く扁平な頭骨が特徴である。四肢は小さい。中にはゲロソラクスGerrothoraxのように外鰓(がいさい)をもったものもある。石炭紀には爬虫類に進化する途中のグループとして注目される炭竜類(目)Anthracosauriaが現れた。間椎体,側椎体,神経弓の三つが合わさった炭竜型椎骨をもち,体の支持構造が発達している。二畳紀初期のセイモウリアSeymouriaで代表されるセイモウリア形類(亜目)Seymouriamorphaは爬虫類と両生類の中間的なものである。
執筆者:長谷川 善和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報