日本大百科全書(ニッポニカ) 「エレファンタ」の意味・わかりやすい解説
エレファンタ
えれふぁんた
Elephanta
インドのムンバイ(ボンベイ)沖、エレファンタ島にあるヒンドゥー教の石窟(せっくつ)寺院。この島に初めて上陸したヨーロッパ人が石窟の象の石像を見てこの名がつけられたといわれ、その彫像はいまムンバイ市内の公園に置かれている。石窟はいくつかあるが、有名な石窟は一つで、建築、彫刻の両面からヒンドゥー教美術の代表作とされている。建築の形式は岩山を掘り抜いた三方に前廊のある入口をもったヒンドゥー教独自の形式をなし、とくに圧巻は窟の奥の砂岩を彫った「三面のシバ神」(トリムールティ像)で、高さ5.5メートルあり、インドの代表的な彫像で7世紀の作。そのほかヒンドゥー教の神話をテーマにした群像形式の優れた浮彫りの像が6面ある。これらの石窟群は1987年、世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[永井信一]