リンガ(読み)りんが(英語表記)liga

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リンガ」の意味・わかりやすい解説

リンガ
りんが
liga

インドで崇拝された男根像。男根崇拝は、アーリア人以外の先住民族の間で、地母神崇拝と合体して広く行われていた宗教であるが、やがて、シャクティ派的な考えから、宇宙の最高神であるシバ神の象徴であるとされた。リンガ像は、普通、女陰をかたどった皿のような台の上に、その女陰を貫く形で立っているが、それほど即物的な形象をもっていない。信者はこれをシバ神とみなし、花を捧(ささ)げ、ギー(乳脂肪)を注ぐ。当初、リンガ崇拝は土着の宗教として低くみられていたが、8世紀の不二一元(ふにいちげん)論ベーダーンタ派の開祖シャンカラなどによって、ヒンドゥー教のなかに高く位置づけられるようになった。それとともに、生殖、子孫繁栄というストレートな願望の対象ではかならずしもなくなり、あくまでもシバ神の象徴としての性格を強くもたされることになった。現在の信者は、リンガ崇拝を性器崇拝であるとはすこしも思っていない。

[宮元啓一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リンガ」の意味・わかりやすい解説

リンガ
liṅga

印,記号標識を意味するサンスクリット語で,インド思想史上さまざまな意味で用いられる。 (1) ヒンドゥー教では,シバ神の象徴として男性生殖器また,それをかたどった像,陽石の意。崇拝の対象とされる。 (2) サーンキヤ学派では,輪廻の主体としての微細身の意。 (3) ニヤーヤ学派では,論証手掛りとするものの意。たとえば「火あり。煙あるがゆえに」という場合の煙がリンガである。 (4) ベーダーンタ学派では,粗大にして目に見える身体の不滅な根源の意。 (5) 文法学においては,名詞語幹。 (6) 修辞学においては,隣接する単語の意味を決定するのに役立つ語の意。

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