サンスクリットで〈標(しるし)〉〈シンボル〉を意味し,とくに男性の性器を指す。これをかたどった彫像は,シバ神あるいはそのエネルギーの象徴として,今日に至るまでインドの民衆に崇拝されている。インダス文明の遺跡から生殖器を表現する遺物が出土することから,その当時すでに性器崇拝が存在したと結論することは早計であるとしても,それらが後代のリンガ像の原型であるとみなすことは可能である。豊穣多産の象徴としてのリンガの崇拝は《マハーバーラタ》などで言及されるが,シバ信仰の発展とともに顕著となり,シバの創造力を象徴する大小のリンガの彫像が多くのヒンドゥー教の寺院にまつられるようになった。なかにはリンガの上部にシバの頭部を浮彫にしたものもあり,2面,4面,5面をもつ場合もある。また男女が小さなリンガ像を護符として身に着けることもあり,とくにリンガーヤッタ派というシバ派の一派の信者は,入信式のときに小さなリンガ像を首にかける。
執筆者:上村 勝彦
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インドで崇拝された男根像。男根崇拝は、アーリア人以外の先住民族の間で、地母神崇拝と合体して広く行われていた宗教であるが、やがて、シャクティ派的な考えから、宇宙の最高神であるシバ神の象徴であるとされた。リンガ像は、普通、女陰をかたどった皿のような台の上に、その女陰を貫く形で立っているが、それほど即物的な形象をもっていない。信者はこれをシバ神とみなし、花を捧(ささ)げ、ギー(乳脂肪)を注ぐ。当初、リンガ崇拝は土着の宗教として低くみられていたが、8世紀の不二一元(ふにいちげん)論ベーダーンタ派の開祖シャンカラなどによって、ヒンドゥー教のなかに高く位置づけられるようになった。それとともに、生殖、子孫繁栄というストレートな願望の対象ではかならずしもなくなり、あくまでもシバ神の象徴としての性格を強くもたされることになった。現在の信者は、リンガ崇拝を性器崇拝であるとはすこしも思っていない。
[宮元啓一]
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…彼はヒマーラヤ山中にあるカイラーサ山でヨーガの修行を行う苦行者であり,美しい女神パールバティーを妃とし,ガネーシャ(日本で聖天となる)とスカンダ(日本で韋駄天となる)を息子とし,牡牛ナンディンを乗物としている。彼はまた生殖をつかさどりしばしば円筒形の男根,リンガの形で崇拝される。南インドでは,ナテーシュバラ(舞踏者の神)と呼ばれ,演劇の保護者として崇敬されている。…
※「リンガ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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