シバ(読み)しば(英語表記)Śiva

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シバ」の意味・わかりやすい解説

シバ(ヒンドゥー教の神)
しば
Śiva

ヒンドゥー教の神。元来「吉祥(きちじょう)」を意味する形容詞であり、漢訳仏典では湿婆の字をあて、大自在天、摩醯首羅(まけいしゅら)などといわれるようになった。その前身をインド最古の宗教文献『ベーダ』の暴風神ルドラに求めうるが、学者によってはさらにこの神の起源をインダス文明に求めようとする者もある。『ベーダ』ではかならずしも重要な神格ではなかったが、ヒンドゥー教において一躍有名になり、ビシュヌとともに信者を二分し、内部にも多数の分派を生じた。

 ヒンドゥー教神話にあって、彼は苦行者の神的塑型となってヒマラヤ山にこもって激しい苦行に専心するが、ヒマラヤ山の娘パールバティーと結婚して愛欲の限りを尽くす。三神一体の神話では、ブラフマー(梵天(ぼんてん))が宇宙創造、ビシュヌがその維持をつかさどるのに対してシバは破壊をつかさどり、ベーダ祭式の破壊者としても知られている。

 他面、彼の男根はリンガの名のもとに崇拝され、生殖器崇拝と深くかかわっている。苦行と愛欲、破壊と生殖など矛盾した属性を有するきわめて個性的な神で、歌舞音曲の守護神でもある。シバは、額に三眼を有し、三日月を頭に頂き、虎皮(とらかわ)をまとい、三叉(みつまた)の戟(ほこ)を持ち、深山妖怪(ようかい)を従え、身に屍(しかばね)の灰を塗って火葬場に出没するなど、狂躁(きょうそう)かつ陰惨な相を有している。その過激な陰惨さは神妃(しんぴ)パールバティー(別名ドゥルガー、カーリー)の信仰に顕著である。

[原 實]



シバ(芝)
しば / 芝
japanese lawn grass
[学] Zoysia japonica Steud.

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。稈(かん)は堅く、走出茎は地面を長くはい、分枝する。5~6月、葉腋(ようえき)から短い花茎を出す。花穂は直立し、長さ3~5センチメートル。小穂は左右不同の卵形で長さ約3ミリメートル、幅は長さの約2分の1、左右扁平(へんぺい)で小花が1個ある。第1包穎(ほうえい)は退化し、第2包穎は革質で光沢がある。内穎と鱗被(りんぴ)はともに退化している。日当りのよい草地に生え、日本、朝鮮半島、中国に分布する。同属の別種で小穂が細いコウシュンシバ(恒春芝)や、葉幅が1ミリメートル未満で糸状になるコウライシバ(高麗芝)、また小穂が大きいオニシバ(鬼芝)とともに芝生として栽培される。開花時はほかのイネ科植物と異なり、花柱や雄しべが小穂の両側からではなく頂端から抜き出る。最初は雌しべだけ出て先に成熟して雌性期を迎え、その後に花柱がしぼみ、雄しべが伸び出て雄性期に転化する。小穂はこの時期に紫色を帯びる。

[許 建 昌 2019年8月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シバ」の意味・わかりやすい解説

シバ
Śiva

ヒンドゥー教で最も重要な神格の一つ。サンスクリット語で「縁起のよい者」の意。『リグ・ベーダ』に単数,ときに複数で現れるルドラ神が民間信仰と混合し,ヒンドゥー教の最高神に発展したものとみられ,その発展の萌芽はブラーフマナ文献中にすでに現れている。神話においてシバはヒマラヤ山中に住んで苦行している。その姿は額に第三の眼をもち,首にヘビを巻きつけ,また毒を飲んだため首が青黒く,頭上に三日月と天から降下したガンジス川を戴く。また槍,弓,三叉の鉾,斧を武器とし,白い雄牛に乗る。温和な面と狂暴な面とを示す多くの呼称をもち,たとえばシバはその温和な面を示し,ハラ(「壊滅者」の意)はその恐ろしい面を示す。シバの神妃はウマーまたはパールバティー,ドゥルガーなどと呼ばれ,本来は山岳地帯の先住民の間に信仰された女神であったと考えられている。シバは仏教に取り入れられ大自在天となる。

シバ(芝)
シバ
Zoysia japonica; Japanese lawn grass

イネ科の多年草。日当りのよい山野や路傍などに生えるが,庭園の芝生やゴルフ場のグリーンなどに大規模に栽培される。日本,朝鮮半島,中国に分布する。茎は地面を長くはい,針金状でじょうぶで,節から根をおろす。よく分枝し,ところどころに短い広線形の葉をつける。初夏,20cmほどの直立する花茎を出し,その頂部に帯紫色で光沢のある細い花穂をつける。芝生として普通に栽植される。シバに似て茎は細く,葉も糸状のイトシバ (コウライシバ) Z. tenuifolia; Korean velvet grassも芝生にされ,美しいがあまりじょうぶではない。なお,セイヨウシバ lawnは多種類のイネ科の草本で種子をまいて育てる。冬も葉が枯れず,いわゆる常緑芝であるが夏の高温多湿に弱い。ナガハグサ (長葉草)などが最もよく使われる。

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