日本大百科全書(ニッポニカ) 「エングル」の意味・わかりやすい解説
エングル
えんぐる
Robert Fry Engle
(1942― )
アメリカの経済学者。ニューヨーク州シラキュースに生まれる。ウィリアムズ大学で物理学を学び、1964年に卒業。コーネル大学の大学院に進み、1966年に物理学で修士号、さらに1969年には同大学で経済学の博士号を取得した。マサチューセッツ工科大学(MIT)準教授を経て、1977年カリフォルニア大学サン・ディエゴ校教授。2000年からニューヨーク大学の教授を務める。
エングルの業績は多岐にわたるが、時間的変化が経済活動に及ぼす影響を分析する時系列分析の分野で新しい手法を提唱したことで知られる。この手法を用いた新しい計量経済モデルとして、アーチ(ARCH:autoregressive conditional heteroskedasticity)・モデルを1982年に発表した。このモデルは、インフレーションや株価収益率の実証分析手法として注目され、株価の変動を計量的にとらえるうえで不可欠かつ画期的なモデルとして、金融関係の実務で広く応用されている。エングルは2003年に「金融時系列においてアーチ・モデルという新しい解析方法をつくりあげた」ことにより、ノーベル経済学賞をC・W・J・グレンジャーとともに受賞した。
[金子邦彦 2018年6月19日]
『松浦克己、コリン・マッケンジー著『EViewsによる計量経済分析』(2001・東洋経済新報社)』